高校野球史上初の東京ドーム開催。選手たちは何を思い、監督たちはどう対策を立てたのか (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 東海大菅生と世田谷学園が戦った準決勝第2試合は、14時27分試合開始。15時から16時にかけて、東京ドームの天井付近がもっとも見づらい時間帯になる。実際に、世田谷学園の野手が高いフライを見失うシーンもあった。

 日大三を破って決勝戦に進出した國學院久我山では、野手の間である約束事が立てられたという。右翼手の内山凛が説明する。

「これまでは正面のフライならそのポジションの選手に任せていましたけど、今日は正面のフライでも周りの野手が追っていくことにしました。もし選手が打球を見失っても、周りがカバーする意識を持とうと」

 そんな内山だが、冷や汗をかくシーンがあった。4対3と1点リードで迎えた9回表二死一塁、内山はライトに飛んできたフライを「一瞬見失った」という。

「途中で見失ったんですけど、最初に落下点だと思った位置まで追ってきたところにボールが落ちてきたのでキャッチできました。ホッとしましたね......」

 もし内山が落球していれば、試合はさらにもつれたに違いない。まさに紙一重のプレーだった。

 東京ドームのポイントは天井だけではない。現役時代に日立製作所や中日の投手として東京ドームのマウンドを経験した、東海大菅生の若林監督は言う。

「私たちの頃よりマウンドの土が硬くなっています。教え子の高橋(優貴/巨人)は『投げやすい』と言っていましたが、実際に見てみたら、こんなに硬いんだなと」

 東海大菅生は世田谷学園に8対0とリードした7回表、コールド勝ち寸前でエースの本田峻也を投入している。本来なら8回から継投する予定を前倒しした理由を、若林監督はこう説明する。

「本田は初めての球場が苦手なので、マウンドを経験させてやりたかったんです。硬いマウンドは本田のフォームに合うとは思いますが、やはり勝手が違うでしょうから」

 東京ドームならではのさまざまな注意点はあるとはいえ、それも球場の特性と思えば大きな問題ではない。選手の健康面だけを考えれば、夏の大会を東京ドームで開催することはメリットが大きい。

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