甲子園はなくても...高校No.1捕手、日大藤沢・牧原巧汰が描くデッカイ夢 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 身長174センチ、体重76キロと大柄とはいえない牧原だが、ボールを呼び込むバランスに長けている。右足を上げてボールを待つ姿は絵になり、呼び込んで逆方向にも飛距離を伸ばせる。タイプ的には森友哉(西武)や近藤健介(日本ハム)がだぶってくる。

 そして牧原は、田上の甘いチェンジアップを逃さずに芯でとらえる。打球は八部野球場の高いライトフェンスを越えていった。

「同点だったので、次につなぐことだけを意識しました」

 高校通算28号となる牧原の勝ち越し本塁打で、日大藤沢打線に火がついた。8回に計3点を加え、慶應藤沢を突き放す。8回裏の守備では、1点を返されてなおも二死満塁のピンチで牧原が離塁の大きかった一塁走者をピックオフプレーで刺す大仕事を見せた。

 牧原はこのプレーで慶應藤沢の流れを分断すると、9回表には2点タイムリー二塁打を放つなど、6得点で試合を決めた。

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 苦しい試合を終えた後、会見の場に現れた牧原の上唇は腫れ上がり、紫色に変色していた。ボールをぶつけて3時間近く経っているが、痛みはまだあるという。

「序盤にテンパりました。自分たちの代ということで力が入って......。自分が幼いというか、ガキだったので。配球も淡々となっていて、読みやすくてピッチャーも困ってしまうリードでした」

 なんとか最後に帳尻を合わせたものの、口をつくのは反省の弁ばかり。大会前には足の筋膜炎を発症したという情報もあったが、プレーに影響はないという。

 取材中、記者から「今年は高校生のいいキャッチャーが多いけど、意識する選手はいますか?」という質問が飛んだ。牧原は堂々とこう答えた。

「全国には内山(星稜)とか関本(履正社)とかいますけど、自分は意識していません。でも、自分が一番だと思って、日本を代表するキャッチャーになるのが目標です」

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