20年前は弱小校→西東京で躍進。怒りを捨てた監督がチームを変えた (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Sankei Visual

 大会前に選手たちと話して、目標を決めました。ひとつは、37人の3年生部員を一度はベンチ入りさせること。(順当に勝ち上がったら)準々決勝で対戦する日大三に勝つこと。そして、西東京で優勝することです」

 タイブレークまでもつれこんだ國學院久我山戦、延長10回裏にサヨナラ勝ちして波に乗った。その後は順調に勝ち上がり、3年生全員をベンチ入りさせることもできた。

 そして準々決勝で、夏の大会で5連敗中だった日大三と激突。終始リードされて追いつく苦しい展開から、2-2で迎えた9回裏にまたもサヨナラ勝ちを収め、ふたつ目の目標を達成。続く準決勝では秋の王者・国士舘に競り勝ち(4-3)、決勝まで駒を進めた。残る目標は、46年ぶりに西東京大会の王者になることだけだった。

 決勝戦の相手は優勝候補の東海大菅生。それぞれ3回に1点を入れ、6回表に佼成学園が1点を加えてリードしたが、8回裏に同点に追いつかれる。決勝戦らしい緊迫した展開になった。

 9回表に1点を入れて突き放した佼成学園は、あと3つアウトを取れば王者になれる。背番号1をつけた平澤燎が、2アウト三塁から投じたボールはセンター前にはじき返され、3-3のまま延長戦に突入。そして迎えた10回裏、1アウト二塁から東海大菅生にサヨナラヒットを許した。

 あとひとつのアウトが取れず、準優勝に終わった藤田監督はこう言った。

「もうひとつ足りなかった。でも、『3年生にはよくやった』と言いたい。生徒からいろいろなことを教えてもらいました」

 佼成学園の監督になって20年。ずっと跳ね返され続けてきた日大三の壁を突破した。長らく遠ざかっている甲子園まで、あと少しのところまで来ている。

「以前は、接戦の試合展開になると我慢できないチームでした。でも、日大三に勝ったことで、自信と余裕が生まれました。この大会で、負けそうなゲームをいくつモノにしたことか。決勝まで勝ち上がることができて、選手に感謝しかない。自立した選手たちのおかげです」

 甲子園のない大会でつかんだ自信を胸に、佼成学園は新しいスタートを切る。 

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