ヤクルト長谷川宙輝の母校にまた大器。控え外野手→本格派右腕へ変身 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 結果的に大差はついたものの、勝った創価に聖徳学園を侮るような気配はなかった。創価の片桐哲郎監督は試合後にこう語っている。

「松崎くんがいいピッチャーと認識していましたし、速い真っすぐに振り負けないこととスライダーをどう見極めるかは選手に言っていました。ここまでの点差は全然予測していなかったので、今日は攻撃陣を褒めたいと思います。本来なら競って、中盤以降の勝負になると思っていましたから」

 屈辱的な敗戦こそ喫したものの、松崎は高校で野球をやめるつもりはない。大先輩のように、自分もプロの世界でやってみたいという思いが芽生えたのだ。

「将来プロに行きたいですが、こんなレベルでは上には行けないので、まずは進学したいと思います。投球にメリハリをつけて、いずれは三振を量産できるピッチャーになりたいです」

 そして聖徳学園にとっても、この大敗は再スタートのための糧になる。中里監督に「チームとしても再出発ですね?」と尋ねると、力強く「はい、出直しです!」と返ってきた。

「このところ、ベスト32が壁になっていて、去年も日大三に負けました。来年はこの壁を越えたいと思っています」

 どん底まで落ち、環境に恵まれなくても聖徳学園は光を失っていない。長谷川宙輝という育成の星に続く松崎公亮という好投手、さらにその下には新チームの主役たちが先輩の広い背中を追っていく。

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