剛腕、実績ゼロ、野手から投手転向...セガサミー「高卒三本柱」が面白い (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 森井ばかりが注目されることも「面白くないですよ」とはっきり口にする。「それは自分が勝っている思いがあるから?」と尋ねると、飯田は「全然あります」と続けた。

「森井もそうだと思いますけどね」

 野心家の右腕・飯田大翔は、密かに爪を研いでいる。

 高卒三本柱「第三の男」の経歴は異色だ。何しろ、昨年夏から投手に再転向しているのだ。

 草海光貴の名前を記憶している高校野球ファンは多いだろう。2015年夏の甲子園、上田西(長野)の2年生エースとして出場した草海は、宮崎日大を6安打完封。大会完封一番乗りの快投を見せた。

 身長168センチと小柄ながら最速143キロを計測し、フィールディングセンスは抜群。そんなマウンド姿は敦賀気比(福井)時代の東出輝裕(元広島)を彷彿とさせた。

 そんな草海も、セガサミー入社後は内野手に転向する。遊撃手として高く評価するスカウトがおり、「もともと野手が好きだったから」という本人の意思もあった。

 プロ解禁となる高卒3年目の昨季は、春先の東京スポニチ大会で遊撃手のレギュラーとして出場する。だが、草海は高い壁を感じていた。

「ずっとバッティングに悩んでいたんですけど、最後までついていけませんでした。高校までとはピッチャーのボールがまるで違って、全然飛ばないんです」

 プロ注目投手の剛球を打席で目の当たりにして、草海は「無理だ」と悟ってしまったという。3年目の都市対抗予選を控えとして終えると、草海は自ら「ピッチャーをさせてください」と首脳陣に申し出る。もともと入社時から「野手がダメだった場合はピッチャーに転向する」という話もあった。

 投手に再転向した草海は、水を得た魚のように練習に取り組んだ。

「野手のときは、バッティング練習がイヤになった時期もあったんです。でも、ピッチャーになって解放感がありました」

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