ものすごい直球でも「ロマン枠」。
NTT東日本の左腕が真のドラフト候補へ

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

「『ロマン枠』と言われているうちは、たぶんプロには行けないってことなんでしょうねぇ」

 佐々木健(たける)はそう言って苦笑を浮かべた。

 富士大から社会人の強豪・NTT東日本に進んで2年目。最速152キロを計測する左腕は、今秋のドラフト候補に挙がっている。だが、佐々木を評する際に頻繁に使われるフレーズは「ロマン枠」だった。

富士大時代からプロ注目の投手だったNTT東日本の佐々木健富士大時代からプロ注目の投手だったNTT東日本の佐々木健 ロマン枠とは、時折すばらしいパフォーマンスを見せるものの、好不調のムラが激しい選手を指す。もし、好調時のプレーを安定して再現できたら、とんでもない選手になるかもしれない。そんな期待を「ロマン」という言葉に込めているのだ。

 佐々木は大学時代から「ロマン枠」と評されてきた。指にかかったストレートの勢いは、「アマチュアにいるべきではない」と思わせるだけのものがある。

 だが、大卒社会人としてプロ入りを狙う佐々木のような選手が「ロマン枠」と言われるわけにはいかない。今年のドラフト会議でプロ入りできたとしても、1年目は25歳になる。ある程度は即戦力に近い実力を身につけていなければならない。

「やっぱりいいボールを投げたからといって勝てるわけじゃないし、勝つために身につけなければいけないことが社会人にはあるわけです。細かい微調整とか、そういう部分ができていれば、僕も大学からプロに行けたんでしょうけどね」

 そして佐々木は自虐的に「そこのセンスがないから、ここまでズルズルきているんでしょうけど......」と続けた。

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