早くも気になる来年のドラフト。
花咲徳栄・井上朋也の打球は音が違う
花咲徳栄のプロ注目選手は、応援スタンドが教えてくれる。同校の定番曲『サスケ』は、チームの中心打者が打席に入ると演奏されるのだ。
若月健矢、岡崎大輔(ともにオリックス)、大瀧(現・武田)愛斗、西川愛也(ともに西武)、野村佑希(日本ハム)と代々受け継がれ、今夏は先のドラフトで広島から4位指名を受けた好打者・韮澤雄也の応援曲になった。そして秋の新チームから演奏されているのが、2年生の井上朋也である。
1年夏から名門・花咲徳栄のレギュラーとして活躍する井上朋也 近年、野手の好素材をこれほどコンスタントに輩出しているのは、大阪桐蔭と花咲徳栄が双璧だろう。入学直後からレギュラーとして起用されてきた井上は、2年秋時点で高校通算40本塁打以上を放っている右の強打者である。
身長180センチ、体重81キロのガッチリした体格。1年夏には横浜高校との練習試合で阪神に3位指名された及川雅貴から本塁打を放っている。
バットとボールが当たった瞬間の打球音が、ほかの打者とは違う。花咲徳栄は冬場にハンマーでタイヤを叩くトレーニングをすることで知られているが、井上はその効果を誰よりも感じさせるインパクトの破壊力なのだ。
現時点で本人は「行けるかわかりませんが、目指しています」と、高卒でのプロ志望を口にする。その一方で「何もかも、すべて力が足らないです」と自己評価は低い。数々の好素材をプロに送り込んできた岩井隆監督も、井上については辛口だ。
「まだ全然ダメですね。あいつはチームの顔にならないといけないのに。プロに行った先輩たちのような練習に取り組む姿勢、人間性がまだ見えません」
ただプロに行くだけなら、今の力でも十分に行ける。だが、プロに入ることはゴールではない。最高峰の舞台で戦える選手になるには、まだまだ課題が山積している。そのことを痛感しているからこそ、井上も岩井監督も浮ついたコメントが出てこないのだろう。
10月5日、県営大宮球場で行なわれた秋季埼玉県大会準決勝で、花咲徳栄は宿敵・浦和学院と対戦した。近年は対戦成績で分のいい相手とはいえ、埼玉をリードする2強である。岩井監督は「時代を築いてきたチーム同士の負けられない戦い」と表現した。
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