習志野の投手起用に見る球数問題。エース温存で投手陣はみな成長した (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 しかし、2回戦の鶴岡東(山形)との試合では、先発の山内が2回表につかまって5失点。飯塚がその回の途中からマウンドに上がったが、五番・丸山蓮に2本塁打を浴びるなどして9-5で敗れた。7回終了時点で3-5まで追い上げただけに、惜しい敗戦だった。

鶴岡東相手に惜敗した習志野ナイン鶴岡東相手に惜敗した習志野ナイン 試合後のインタビューで小林監督は試合をこう振り返った。

「山内が悪かったというよりも、鶴岡東のバッターが狙い球をしっかり絞ってきた。ミスショットがなく、完璧にやられてしまいました。飯塚に関しても同じでした。鶴岡東の野球が攻守ともに上回っていたと思います」

 潔く完敗を認めた小林監督は、記者からの「この大会では複数の投手を登板させるチームが多いが、高校野球の新しい流れなのか」という質問に、苦笑しながら口を開いた。

「そんな大局的なことはわかりません。うちの実力はアベレージよりも下。自分のチームをどうにかすることしか考えていません。それで、いっぱいいっぱいですよ。140キロのボールを投げるピッチャーが何人もいるチームもありますが。うちは『やりくり』をしなくちゃいけませんから」

 エースを温存しながら、2番手投手に出番を与えて育てたことを、苦心の末の「やりくり」だと言う。

「選手には"場"を与えてあげたいと思っているんです。できれば、練習ではなくて練習試合、練習試合よりも公式戦で。大切な試合で投げて、『そこまでステップアップしてこいよ』という感じです。

 そういう機会を与えず、いきなり力を出せと言ってもそれは無理です。場を与えるというのはチームの約束事。そういう中で選手が結果を出して、結果的に投手陣のバリエーションが豊かになればいいなと考えました」

 今夏の甲子園2試合で先発した山内のほかに、スターティングメンバーには2年生が5人も名を連ねた。春夏連続で甲子園に出場した経験は、そのまま新チームに受け継がれることになる。

 小林は続ける。

「センバツで準優勝したあとに、選手たちにやり切った感が出たり、燃え尽き症候群になったりすることを危惧していました。鼻が伸びてしまうんじゃないかと。でも、選手たちは地に足をつけていて、自分たちの元値(もとね)がわかっている。『そういう(全国で準優勝するような)チームではない』と選手たち自身が言っていましたし、心配したようなことはなかったですね。

 センバツのあとの3カ月で、データと違う何か......ピッチャーなら球種が増えたとか、『具体的な成果を持って夏の大会を迎えよう』と言って、4月にスタートしました。それがチームの成長につながったかどうかはわかりませんが、彼らの姿勢は認めてあげたいです」

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