大阪桐蔭、履正社に大阪偕星が待った!指揮官はぼやくけど自信あり (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sportiva

 そんなプレッシャーのなかで鍛えこんだ技は数字にも表われ、4年前の大阪大会は7試合で34犠打。この夏もここまで3試合で12犠打。北野との試合でも松山、坪井が見事な送りバントを決めている。

 このノーミスバントに、今年からは全員ノーエラーの内野ノック、145キロのマシンの球に対して全員が外野フライを打たなければならない練習も加えられた。つまり、この3つをすべてクリアしなければ終わらないわけだ。山本は「今年からは終わりの時間を決めたので、4年前のようにエンドレスということはなくなりました。ウチも甘くなりましたよ」と豪快に笑ったが、練習が夜遅くまで続くことも珍しくない。

 今の時代、いろいろな声も出るが「人と同じことをしていて日本一になれるのか」と、山本の軸がぶれることはない。

 大会前、山本は「個々の力は4年前と比べて間違いなく上」と語っていたが、同時に「心が足りない。4年前のチームはハートがあった」とも言っていた。山本の言うハートとは、負けん気、反骨心、勝負根性、熱......の意味が込められている。4年前のメンバーはヤンチャな面々も交じり、互いにぶつかり合いながら湧き出るエネルギーがひとつに集約され、最後に巨大な爆発力を生んだ。

 この"ハート"は大阪偕星の肝の部分である。今年もメンバーはまじめに日々の練習に取り組んできたが、夏を前に山本の表情はくもっていた。

「坪井がね......」

 夏の大会のキーマンと言い続けてきた男のことが、常に引っかかっていたのだ。山本も坪井の潜在能力の高さは十分に認めているのだが、取り組みの甘さや心の弱さが気になっていた。

 昨年秋は股関節を痛め、今年の春は右ひじの故障とコンディションの不安が続き、その面で本領発揮といかない部分はあったが、山本はそれも含め「甘さ」と指摘。6月半ばには「福田の成長、チーム一丸の雰囲気も感じて、ようやく必死になってきましたが、夏に間に合うかどうか......」とも語っていた。

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