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元大阪桐蔭の主将ふたりが実感。
早大・小宮山監督のマネジメントの極意 (2ページ目)

  • 清水岳志●文 text by Shimizu Takeshi
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 9回、マウンドには新井がおり、小宮山監督は吉澤に再び声をかけて念を押した。

「試合前に大好物って言ったよな」

 そして2球目、高めのスライダーをとらえると、打球は風にも乗ってレフトスタンドへと吸い込まれた。小宮山監督が笑顔で振り返る。

「ゲームを決定づける貴重な1点になった。シーズン中、初めてですね、オレがガッツポーズをしたのは。ベンチを出て吉澤とグータッチするなんて」

 吉澤にとって、このホームランは偶然ではなかった。前の週の立教大3回戦の5回、代打で出てキャッチャーフライに打ち取られたのだが、その打席が大きなきっかけとなった。

「ピッチャーは大阪桐蔭の先輩・田中誠也(4年)さんで、打ったのは2球目の低めの真っすぐでした。しっかり準備をして、ストライクを思い切り振れた。タイミング、スイングとも自分のなかではバッチリでした。ちょっとかみ合わなかっただけのキャッチャーフライだったので、自分としてはいいイメージがありました。あの打席があったからこそ、法政戦でホームランが打てたと思います」

 キャッチャーフライを小宮山監督も咎めることはなかった。

「惜しい打席でした。積極的に打ちにいっての結果なので。思い切りよく、吉澤本来のスイングをした。相当高く上がった打球で、角度が違ったら外野を越していました」

 吉澤にとって、春のシーズンは複雑なものだった。昨年まで自分が守っていたファーストのポジションには大阪桐蔭の2年後輩である中川卓也がついている。

「そりゃ、悔しかったですよ。まあ、春夏連覇のキャプテンですし、3番を打っていた選手ですから。アベレージを残すバッターで、自分とタイプは違うけど、実力は認めています」

 昨年秋のシーズンから吉澤のバットは湿った。

「自分はうしろの軸で打つタイプなのに、前の軸で打っていた。練習はいいんですけど、実戦で前に突っ込んでしまう。その分、ボールが早く見えて、芯でとらえられなかった」

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