元大阪桐蔭の主将ふたりが実感。早大・小宮山監督のマネジメントの極意
東京六大学野球の春のリーグ戦で早稲田大は3位で終えた。新監督に小宮山悟を迎えて臨んだが、これで7シーズン天皇杯から遠ざかることになった。
そんな早大だが、小宮山采配で象徴的だったのが1年生の中川卓也の起用だ。打率.128と苦しんだが、小宮山監督は我慢強く使い続け、全試合出場を果たした。その中川にポジションを追いやられた形になったのが3年生の吉澤一翔(かずと)だ。それでもリーグ戦終盤は結果を残し、存在感をアピールした。
1年生ながら春のリーグ戦で全試合全イニング出場を果たした早大・中川卓也 奇しくもこのふたりは、大阪桐蔭で主将を務めた先輩と後輩の関係である。ふたりにこの春のシーズンに感じたことはなんだったのか。また、小宮山監督への思いとは......。
小宮山監督は、春のシーズンでホームに生還した選手をベンチ前まで出てきて迎えたのは1回だけだった。その迎えられた唯一の選手が吉澤だ。5月20日の法政大との3回戦、6対4と早大の2点リードの9回表、吉澤が代打でソロホームランを放った時だった。
「監督とグータッチするなんて......びっくりしました」
吉澤は今でも恐縮する。
早大打線は左打者が7人並び、セオリーだと左の変則投手は打ちづらいとされている。小宮山監督は前日の試合中、法大のブルペンで投球練習をする新井悠太朗(4年)の姿が目に入った。「左のサイドハンドで嫌なピッチャー。うちの打者はクルクル回るだろうな」。
そして3回戦の試合前、こんなやり取りがあった。小宮山監督が振り返る。
「吉澤に『代打で使おうと思うけど、左の変則ピッチャーは好きか嫌いか』と聞いたんです。あまり好きじゃないなんて言ったら気合いを入れようかと思っていたら、『大好きです』と」
吉澤の「大好きです」という返答があまりにも早く、小宮山監督は使ってほしいという強い思いを感じたという。吉澤も笑顔で振り返る。
「法政の左のサイドハンドピッチャーは好きかと聞かれて、試合に出ていなかったので『大好きです』と即答しました。監督も『よし!』と笑っていました」
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