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ズバリ中高一貫校が甲子園のトレンド。
6年スパンの強化策が実を結ぶ (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 大分高は内野手出身で、守備指導に定評のある松尾篤監督、大分中シニアはオリックスなどで投手としてプレーした岩崎久則監督が率いている。松尾監督には「ノッカーと選手の1対1の勝負」という守備へのこだわりがあり、選手たちもそんな野球にあこがれて入ってくる。そこで野田コーチは「中学では逆に打撃を強化して、高校で守備を伸ばせばいい」と考える。当初は中学野球部に籍を置いていた野田コーチがパイプ役となり、大分中高の連携を深めていった。

 2014年夏に大分高は春夏通じて初めて甲子園に出場する。当時の甲子園メンバー18人のうち、大分中シニア出身者は1人だけ。それが2016年夏に2度目の甲子園出場時には、18人中9人が大分中シニア出身者で占められた。そして今春センバツは18人中13人が大分中シニア出身である。

 昨年8月からは、野田コーチが中学・高校を巡回するコーチに就任した。日本高野連が定めた規定で、サブ指導者(副部長など)であれば中高共通のコーチは認められている。風通しは一層よくなったとはいえ、中高一貫校ならではの難しさもあると野田コーチは言う。

「マンネリ化をいかに防ぐかですね。中学、高校と同じ顔ぶれでやっていると、刺激がなくて行き詰まります。そこで外進生(高校から入学する外部進学生)の力が必要になります。彼らが活気を与えてくれるから、チームがさらに強くなっていける。だから内進生には『いかに外進生との壁を取り払えるかが大事だぞ』と伝えています」

 中高一貫校の最大のメリットは、中学3年夏の公式戦が終わった段階で高校野球部の練習に参加できるようになることだろう。私立学校の場合は中学・高校の学校長が同一人物であり、その承認が得られれば中学生でも高校の練習に参加できる。

 日章学園中でキャプテンを務めた稲森心は中学3年夏の全国大会で敗れた後、すぐに高校野球部の練習に参加したという。

「負けて次の日くらいから合流していました。夏休みに遊びたい気持ちは少しありましたけど、全国大会で負けて帰ってきて『今度は高校で甲子園だ!』という思いが強くなったんです」

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