昨年以上の期待。2019年ドラフト戦線をリードする9人の逸材たち (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 大学生なら明治大のエース・森下暢仁(まさと)の評判が高いようだが、「打ちにくさ」で津森宥紀(ゆうき/東北福祉大/右投右打)を推したい。

 サイドハンドから最速149キロの速球を誇り、スライダー、チェンジアップ扱いもうまく、プロで通用する条件は満たしている。制球力、対左打者など課題は多いが、ナチュラルに激しく動くボールの軌道は魅力十分。

 しかも昨年3月に右手中指を剥離骨折し、爪も剥がすアクシデントに見舞われながらも6月の大学選手権で好投を続け、全国制覇。いい意味での"鈍感力"もプロ向きと見ている。

 投手の次は捕手だ。今年の高校生は、捕手も多士済々の逸材が揃う。なかでも筆頭は、有馬諒(近江/右投右打)だ。

 昨年は春夏続けて甲子園に出場し、夏はベスト8進出を果たすなどチームの躍進を支えたが、有馬のすばらしさはプレーよりも"説明能力"にある。試合後の囲み取材での"答弁"がじつに唸らせる。

 記者からの質問に対して、そうなった背景、理由、結果をじつに簡潔明瞭に返答できる。身体能力なら有馬よりも高い選手はいくらでもいるが、捕手としての総合力で有馬は群を抜いている。

 大学生捕手は、東洋大の佐藤都志也(としや)が高く評価されているが、肩の強さでは海野隆司(うみの・たかし/東海大/右投右打)。

 昨年の日本シリーズでソフトバンクの甲斐拓也が次々と広島の足を封じ、一躍"甲斐キャノン"が脚光を浴びたが、同じく肩でメシを食っていけるとしたら、この海野だ。

 肩だけじゃない。ショートバウンドを体で吸収するように止められる技術も出色。投手に気持ちよく投げてもらおうとする姿勢がすばらしく、"いい匂い"のする捕手である。

 野手なら、石川昂弥(たかや/東邦/右投右打)のバッティングに期待したい。石川はただの長距離砲ではなく、打球方向がじつにいい。金属バットで引っ張った当たりの打球は"出会い頭"もあり、それほど信用できないが、石川は右中間に信じられない飛距離を出せる。左右の違いはあるが、履正社時代の安田尚憲(ロッテ)を彷彿させる。

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