阪神・福留の野次にも負けず。クラブチームの大和高田がジャイキリ達成 (3ページ目)

  • 楊順行●文 text by Yo Nobuyuki
  • photo by Kyodo News

 都市対抗予選でも、例年のようにジャイキリを遂げており、10年には強豪並みいる近畿予選を勝ち抜き、東京ドーム初出場を果たしている。佐々木監督は言う。

「クラブといえども、企業に伍(ご)して前頭5枚目くらいまではきているかな。つまり大関、横綱と当たる番付です。大それたことは考えませんが、相撲ならば低く当たって前褌をつかみ、懐(ふところ)に入り込み、時には猫だましだったりと、それなりの戦い方はできる。

 そこで大切になるのが、準備です。平幕が大関と当たれば、その取り口を徹底的に研究するでしょう。同じように相手のデータを分析し、映像をじっくり見て、弱いところを攻める。たとえばポジショニングなども、ハタからは『よう、あんなとこ守らせるな』というくらい大胆に動かしますよ。おかげで、完全なヒットコースが野手の正面だったりしますから」

 昨年のクラブ選手権では、ライバル・和歌山箕島球友会と0-0のまま延長に突入し、10回表に得点しながら逆転サヨナラ負けした。箕島の左腕・和田拓也に9回までわずか2安打に封じられたのが最大の敗因だった。

 だが「あの悔しさを忘れるな」と挑んだ今季は、やはり決勝で対戦した箕島に、同じタイブレークの末に9-7と勝利し、4回目の優勝を果たしている。これも、準備。「まずは打倒・企業より、打倒・和田と取り組んだ」(佐々木監督)という1年が、6回途中までで5点を奪い、和田をマウンドから引きずり下ろすという結果につながったわけだ。

 そして、この日。今年の都市対抗で優勝候補のHondaを破ったJR四国を、堂々と寄り切った。

 さあ、2回戦は佐々木監督の古巣でもある新日鐵住金広畑との対戦。都市対抗で2回の優勝がある古豪だが、「野球は、何が起こるかわかりませんよ」と4番の廣井がニヤリと笑う。

 06年夏の甲子園。智弁和歌山は、8-4とリードしていた9回表、帝京に8-12とまさかの逆転を喫するのだが、9回裏、5点を奪ってまさかまさかの再逆転という球史に残るサヨナラ勝ちを演じた。まさに、「野球は何が起こるかわからない」試合だった。ちなみに廣井は、その時の智弁和歌山の4番打者であった。

 9年前に日本選手権ベスト8という快進撃を見せた大和高田クラブ。果たして、再現は起こるのか。大いに注目だ。

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