金足農にまさかの逆転負け。「横浜らしさ」はどこにいったのか (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 だが、2回以降は"横浜らしさ"が見えなかった。2回は先頭打者が相手失策で出塁したが、9番の遠藤圭吾が初球を打ってセカンドゴロ。相手のミスの後だけに、どんな作戦を採るのか注目したが、駆け引きもなく、あっさりと初球を打ってしまった。

 横浜対速球派右腕で思い出されるのが、2001年夏の日南学園戦。150キロを超える速球を武器にした寺原隼人に対し、横浜が用いたのはバスターエンドラン。データ分析を担当していた当時の小倉清一郎(きよいちろう)部長が「寺原はバントをやらせにくると球速が落ちる」と見抜き、バントの構えで遅い速球を誘ったのだ。このような頭脳作戦が横浜の強さの一因だった。

 4回には二死一塁から山崎が盗塁を失敗したが、走ったのはストレートのとき。クイックも球のスピードが速い吉田相手では、変化球のときに狙う方が成功の確率が高い。

「球種を考えて走った? それはないです。クイックが早いのはわかっていたので、警戒しすぎた。キャッチャーの肩の強さはあまりわからなかったですけど、自分の足なら行けるだろうと」(山崎)

 投手のクイックのデータはあったが、捕手の二塁送球のデータはなかったのだという。分析を得意とした"横浜らしく"なかった。

 そして、勝敗に大きく響いたのは8回の攻撃。一死三塁から、途中出場の2番・小泉龍之介の2球目にスクイズをしかけるがファウル。結局、小泉はショートゴロ、続く斉藤大輝もサードゴロに終わり、追加点を奪えなかった。

「『スクイズのサインが出るかも』と言われていたので、準備はしていました。ピッチャー前でいいと言われているのに、ヘッドが下がってファウルになってしまった。自分の弱さです」(小泉)

 普段から実戦形式で練習は積んでいるが、小泉にスクイズのサインが出たのは練習試合も含めて初めてだった。

 この日は吉田に14三振を奪われたが、そのうち7つは走者が得点圏にいる場面。ピンチでギアを上げる吉田の投球がすばらしかったのはあるが、守備側にとって重圧のある状況。金足農の内野陣はこの試合を含め、3試合で3個の失策を記録している。なんとかしてバットに当てれば、何かが起こる可能性がある。

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