最速148キロ、県大会2本塁打。
創志学園のマルチプレーヤーは根尾昂級

  • 井上幸太●文・写真 text&photo by Inoue Kota

「実は前日のノックは、レフトに入っていたんです。当然『今日の試合もレフトだろう』と思っていたら、『ショートだぞ』と言われて。ビックリしましたけど、体も動きましたし、違和感なく守れました」

 本人は淡々とこともなげに振り返っていたが、衝撃を受けたことをよく覚えている。

 中学時代に所属した「鳥取ボーイズ」では、本格派投手として鳴らしていた。故郷の鳥取を離れ、創志学園の門を叩いたのも「投手として成長したい」という思いからだった。

「自分が中学生のときに、髙田萌生さん(巨人)が下級生ながらエース格として活躍していて、『創志はピッチャーが伸びる環境なのかな』と。ちょうど『親元を離れて、寮生活をした方が精神的に成長できるはず』と県外の強豪を希望していたので、進学を決めました」

 入学後、先ずは野手として頭角を現す。1年秋にレギュラーを掴み、当時投手だった難波侑平(日本ハム)のバックを守った。2年春(2017年)のセンバツにも、「8番・三塁」で先発出場を果たしている。トップを深く取った振り出しから、広角に痛烈な打球を飛ばす打撃が持ち味だ。

「昨年の秋が終わった後に、タイミングの取り方を変えました。始動が遅れて、詰まってしまう場面があったので、『長くボールを見られるように、動き出しを早めよう』と。意識することで、かなり確実性は上がってきました」

 投手としては、2年秋にエースナンバーを奪取。しかし、春以降は1学年後輩の西純矢(じゅんや)に、その座を奪われた。春の取材で、そのことに話を向けると、「1番を取られたことには、悔しさがあります。夏にまた奪い返せるように頑張りたい」と語っていた。

 その言葉通り、夏前の練習試合では、自己最速を更新する148キロをマーク。落差のあるフォークを中心とした変化球にも磨きをかけたが、夏に渡された背番号は「6」。主に「3番・レフト」でオーダーに名を連ねた。チーム内での自身の役割を考え、中山は言う。

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