駒大苫小牧→苫小牧駒大の快腕あらわる。2年後のドラフトで争奪戦へ (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 高校3年時に143キロだった最高球速は、駒大1年時に148キロ、そして苫小牧駒大2年の現在は154キロまで伸びた。伊藤は「球質が大事ですが」と前置きしつつ、こう語っている。

「160キロは不可能な数字ではないと思っています。9回をしっかり自分のペースで投げきる負けない投手になること。それと160キロを投げる投手になること。体作りを含め、しっかりやっていきたいと思っています」

 連投となった大学選手権2回戦では、東京六大学の名門・慶應義塾大につかまり、5回途中7失点でノックアウト。チームも5回コールドで敗れた。伊藤は苦笑混じりに「もっとプレッシャーをかけられる投手にならないと全国に通用しないとわかった」と完敗を認めた。

 だが、慶大の4番打者・郡司裕也(3年)に「僕の打順になると明らかにギアが変わって打てるボールがなかった」と言わしめるほど、中軸に対するボールは圧巻だった。伊藤のストレートはただ速いだけでなく、コースにズバッと決められるだけのコントロールがある。とくにインコースのボールは対戦した打者が「気持ちが前面に乗ってくる」と評するほど、迫力満点だ。

 大学選手権での投球が認められた伊藤は、6月22日から始まる大学日本代表選考合宿に追加招集された。おそらく向こう2年半、伊藤はプロスカウトから徹底マークされる存在になるだろう。

 また、中退したとはいえ、古巣の駒大には同年齢の上野翔太郎(3年)ら仲のいい選手も残っている。駒大への思いを報道陣に問われた伊藤は、「体制も変わって、いい雰囲気で練習しているみたいですね。今でもやっぱり気になります」と言った。

 だが、伊藤の視線はすでに前を向いている。伊藤は自身の野球人生をつなぎとめてくれた故郷への思いを語った。

「高校の頃は正直に言って『北海道の大学なんて......』と見下している気持ちがありました。でも北海道に戻ってきて、今は『北海道を盛り上げたい!』という思いが強くなっています」

 紆余曲折を経て、別人のように生まれ変わった快腕は、北の大地でさらなる進化を誓っている。

◆ホームラン歴代3位・門田博光の「清宮幸太郎分析」がおもしろすぎる>>

◆貧打のプロ球団に朗報。大学選手権に3人のドラフト級スラッガー出現>>

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る