横浜×PL延長17回最後の打者が、独立リーグ監督となって揺れる心 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 市川光治(光スタジオ)●写真 photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

 独立リーグからNPBの球団にドラフトで指名された選手を見ると、必ずしもリーグ戦で結果を残している選手とは限らない。むしろ、一芸に秀でた選手が多く、NPBは即戦力というよりも将来性が光る、ダイヤの原石を探している。

「ここの選手たちのポテンシャルは想像以上に高かった。持っているものを見ていたら、なぜこれで社会人のチームに行けなかったのかな、というレベルの選手もいるんです。ただ、彼らの中には何も教わってこなかったという子がけっこういる。

 バッティングのときの下半身の使い方、塁に出たときのリードの取り方、キャッチャーのブロッキング......僕らからしたら当たり前だということを教わってないんです。才能と感覚だけで野球をやってきたんでしょうね。だから何か質問しても、僕が今までに聞いたことがないような答えが返ってきます。もしかしたらそういう考え方もあるんかなぁって、僕のほうがビックリさせられますよ(苦笑)」

 今シーズン、開幕ダッシュに成功した福井ミラクルエレファンツだったが、5月下旬に負けが込み、6月に入ると信濃グランセローズにトップの座を明け渡してしまう。グランセローズにはすでにマジックが点灯しているが、現在、アドバンス・ウエストの2位につけているミラクルエレファンツは、前期の残り3試合(6月16日現在)、最後の巻き返しを図る。

 そもそも田中は、福井という土地には縁もゆかりもなかった。それでも彼は指導者として修業を積むつもりで、この街へやってきた。千葉に家族を残しての単身赴任。食事はカップラーメンやレトルトも珍しくない。朝はごはんをいて、おにぎりをむすんで、持ってくる。ウインナーを焼けば、かなりのご馳走だ。

「福井に来て、10キロ痩せました。現役のときは身体に気を遣ってカロリーゼロのコーラを飲んでましたけど、今はどうやってカロリーを摂ろうかと思ってます。コーラはもちろんレギュラー、お菓子もガリガリ君も、積極的に食べてます(笑)」

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