大阪桐蔭と済美。「のびのびプレーできる国体」にみる強豪校の思惑 (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

 ピンチの場面を迎えても、済美の中矢太監督は動かなかった。夏の甲子園3回戦、盛岡大付(岩手)戦で八塚がリリーフに失敗し、逆転負けを喫しているにもかかわらず、だ。

「試合前は継投策を考えていたのですが、8回まで八塚が抑えてくれたので、最後まで投げさせると決めました。夏の負け方が負け方だったのでここで乗り越えてほしいという思いもありましたが、最後のアウトを3つ取るのがどれだけ難しいかをまた思い知らされました」(中矢監督)

 結果は最悪だった。それでも試合後、涙をにじませながら記者の質問に答えた八塚は「自分としては100パーセントのピッチング。日本一のチームに挑むことができて、後悔はありません」と語った。この悔しさは次のステージで晴らすしかない。

 土壇場で見せた大阪桐蔭の底力は王者にふさわしいものだった。「夏の負け方は関係ありません。もっと野球がうまくなるように。そう考えてプレーしようと選手には話しました」と西谷浩一監督。  

 新チームでキャプテンをつとめる中川卓也は言う。

「後半に強いので、9回も焦りはありませんでした。ダンテさんの勝負強さは自分たち2年生にはないもの。先輩たちは改めてすごいと思いました。3年生と一緒だと、のびのびプレーできますね。国体で吸収したものを自分たちのチームに生かしたいと思っています。キャプテンとしてチームをひとつにして、本気の本気を出せるように。前のキャプテンの福井さんには『キャプテンの心が折れたらチームも折れる。キャプテンが変わればチームも変われる』と言われています」

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