「イチローの恋人」が宝塚ボーイズで教える、野球よりも大切なこと (5ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sportiva

 また、選手たちの心磨きにつながるものとして、宝塚ボーイズがもうひとつ行なっているのがNPO法人・ベースボールスピリッツ(2010年設立)としての活動だ。奥村監督の青少年育成に対する考えや、宝塚ボーイズの活動に賛同してくれる人や企業を募り、また奥村監督がNPO法人の社員として行なう講演で得た資金で活動を展開する。

 たとえば、チームの合宿を兼ねて日本各地に出向き、現地の小学生や幼稚園児を相手に野球教室を行なう。きっかけは、奥村監督が講演のため出向いた島根県大田市で少年野球の指導者たちと話すなかで、「もっと枠を超えた活動ができないか」と思ったことだった。

「田舎の小さな子どもたちにとって、プロ野球選手になるとか、甲子園に出るというのは、本当に夢のまた夢。その前にもっと身近なもので何かできないかと考えたときに、中学生が子どもたちに教える野球教室を思いついたんです。小さな子どもたちにとって、年齢が近いお兄ちゃんたちから野球を教えてもらうことは新鮮で、普段と違う楽しさがある。そのなかで、僕が選手たちに教えてきた野球や礼儀を、たとえば大田の子どもたちに伝え、広めていければ......と思ったんです」

 その一方で、技術も知識も未熟な子どもたちを相手に野球を教えることで、選手たちも多くのことを学ぶ。

「相手の気持ちになり、目線を下げて伝える難しさ。ウチの選手たちを成長させてくれる、本当にいい機会になりました。また、地方の方々の温かさにも触れ、人間的に優しく、豊かになっていくと実感しています」

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