あの宇部商「サヨナラボーク」の真実を、捕手・上本達之が明かす (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

──2年生エースの藤田投手は、体をめいっぱい使ったストレートと落差のあるカーブで相手打線を抑えました。8回まで1失点という好投。延長15回まで試合は進みます。

上本 僕はピンチのとき、二塁ランナーがサインを見て球種をバッターに伝えているのに気づいていました。(サインを盗む行為に対して)当時は今ほど厳しくなかったですから。でも「このままじゃまずい」と思っていながら、ピンチを乗り切ってベンチに帰ると、ホッとしてそのことを忘れてしまう。僕は本当にバカでした。藤田の球種はストレートとカーブしかないので、何を投げるかわかれば打たれますから。

──もし、試合中に対策を講じていれば、あの結末はなかったかもしれませんね。

上本 そうですね。もし、サインを盗まれていることを監督や藤田に話して、出し方を変えていれば、あんなことには絶対にならなかったでしょう。キャッチャーが僕だからそうなったんだと思います。昔だったら話せなかったというのはそういう意味です。ピッチャーからすれば、「上本さんが悪い」となります。本当にそうです。延長戦になるまでにサインを覗かれているのはわかっていたんですけど......ピンチが少なかったので、大丈夫だろうと。

 僕の出すサインがバレていることを監督に伝えたら、何らかの指示があったはずです。それを逆手にとることもできたのに、まったく対処せず、延長15回の場面を迎えてしまいました。

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