73歳と75歳の超ベテラン監督が語る「甲子園で指揮をとる幸せ」 (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 その阪口より3歳上の今年9月で76歳になる日本文理(新潟)監督の大井道夫は、この夏に出場した49校の監督のなかで最年長となる。

「いやぁ、こう見えて私もいろいろしているのよ。胆管を切って、石も取ってね。でも、グラウンドに立って、たまに大声を出しながら子どもたちと好きな野球をやって......それがいいんじゃないのかな」

2009年夏に新潟県勢初の決勝進出を果たし、準優勝に輝いた日本文理・大井道夫監督2009年夏に新潟県勢初の決勝進出を果たし、準優勝に輝いた日本文理・大井道夫監督 自身の病歴を挙げながら、まるで他人事のような快活さでこう語る姿は、極めて元気である。

高嶋(仁・智弁和歌山監督)さんも含めた3人のなかでは、オレが最年長。ここに如水館(広島)の迫田(穆成/よしあき)さんが来てくれたら、オレの上なんだけどね。6年前のセンバツで会ったときに『よかった。迫田さんがいてくれるから最年長じゃなくて』と言うと、『大井さん、70歳あたりになると2つ、3つ違ってもみんな同じだから』って言われて、笑ったもんですよ。だから今回もそういうこと。阪口さん、高嶋さんにも『変わんないよ』って言っといて」

 こう言うと、また実に愉快に笑った。

 太平洋戦争の開戦が迫っていた1941年9月、割烹料理店を営んでいる両親の長男として、栃木県宇都宮市に生まれた。戦火をくぐり抜けながら野球少年として成長し、高校は宇都宮工業へ進んだ。

 ここで1958年のセンバツと59年夏の2回、甲子園の土を踏んでいる。キレのいいストレートと落差を変えて投げ分けるカーブが得意なサウスポーで、打撃にも見るべきものがあった。

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