昨年準優勝の北海・大西健斗が語る「甲子園で負けてよかったこと」 (4ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

KOされてレフトの守備位置で聞いた言葉

――たったひとりで投げ続ける大西投手に異変が起きていました。右腕はずっとしびれていたそうですね。

大西 甲子園の舞台でアドレナリンが噴き出していたはずですが、それが効かないくらい痛みがあって、ボールを握っている感覚さえありませんでした。「これ、スライダーの握りだよな」と確認しながら投げていました。余計なことを考えず、全力を出すことしか僕にはできません。もうボロボロで、「オレがやるしかない」という責任感だけで投げました。痛いとか、つらいとか、まわりに感じさせたくありませんでした。

――決勝の相手は作新学院、マウンドには今井達也投手がいました。ともに日本を代表する古豪同士の対決。もし北海が勝てば初めての全国優勝でした。

大西 初回を抑えて、2回も3回も打ち取ったので「いける!」と思ったのですが、4回の微妙な判定で自分のピッチングを見失ってしまいました。甘いコースに入った球を強打され......そこからポンポン打たれてしまいました。

 正直に言えば、マウンドから降りたくありませんでした。後輩にあとを託す形になってしまって、申し訳ないという気持ちもありました。メチャクチャ、悔しかった。でも、後輩に「頑張れよ」と言って、マウンドを降りました。

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