神奈川の夏を熱くする高3右腕。強豪封じにスカウトも名将もニンマリ (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 また、本田のピッチングフォームは独特だ。テイクバックは気が済むまで時間をかけて、そのなかで十分なタメをつくり、狙いを定める。「ジワ~、ビュン!」。こんな感じのリズムで、ゆっくりと軸足に体重を乗せておいて、一気に腕を振り下ろす。

 このゆっくりから一気の加速に、打者はついつい始動が遅れて、ボールに差し込まれてしまう。タイミングを合わせるのは相当に難しい。

「入学してきたときは、何も知らなくて......ようやくピッチャーらしくなってきた。すごく頑張り屋で、練習でも投げすぎてしまうから試合の日に疲れが残ってしまうんです。この前も、明後日が試合だっていうのに、バッティングピッチャーでいっぱい投げて、やっと終わったかなと思っていたら、また投げている。ほんと、笑っちゃうぐらい投げるのが好きな子だからね」

 ピッチングの"ピの字"も知らなかった本田を、手塩にかけてここまでのピッチャーに育て上げた土屋恵三郎監督は呆れたように、だけどすごく嬉しそうに語っていた。

 土屋監督といえば、神奈川県屈指の強豪校である桐蔭学園の監督を30年務めた名将で、2015年からは星槎国際湘南野球部の指揮を執っている。野球のうまい子が集まってくる桐蔭学園とは真逆の環境だが、やりがいと手応えを感じながら"第2の監督人生"を送っている。

 まもなく迎える神奈川の夏。シード校といえども7試合勝ち抜かなければならない全国屈指の激戦地だが、本田にとって、その前に乗り越えなければならないもうひとつの"試練"がある。

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