2016.08.12

中越・今村豪「たった2球の失投」を招いた
絶好調というワナ

  • 中村計●文 text by Nakamura Kei
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 調子のよさが、逆に自らを追い込んでしまった。

 中越の身長165センチの小兵左腕・今村豪は、富山第一打線を相手に「手元でずらして、バットの芯を外すピッチング」で内野ゴロの山を築いていた。

9回一死までノーヒットピッチングを続けていた中越のエース・今村豪 順調そのものだったが、7回を終えたとき、気持ちに微妙な変化が生じた。センター後方の電光掲示板の「H」のランプの欄がゼロを示していることに気付いたからだ。そこまで1つのエラーと、3四球で再三走者を許していたため、自分がノーヒット・ノーラン中だとは思わなかった。

「欲が出ると打たれてしまうので、意識しないように、意識しないようにと言い聞かせました」

 8回裏、エラーと2つのフォアボールで二死満塁のピンチを迎えるが、頭上の強烈なピッチャーライナーを抜群の反射神経で捕球し、何とか切り抜けた。

 観衆は、拍手喝采。大記録達成の予感に異様な雰囲気に包まれ始める。ただ、中越も9回表までゼロ行進が続いていた。

 その裏、今村は先頭打者を中フライに打ち取り、まずは1アウト。

 今村のこの夏の課題は「失投をなくす」ことだった。球威のない今村のボールは、コントロールを間違えると決まって打たれていたからだ。

 この日は、そこまで「1球も失投はなかった」という。ところが、左の4番・狭間悠希に対する2球目、外をねらったスライダーがやや内に入ってしまう。

「投げた瞬間、まずいなと思った。失投を見逃さないところは、さすが富山第一さんだと思いました」

 右中間に運ばれ、ワンアウト二塁。一打出ればサヨナラという決定機を与えてしまう。