好投手揃いの大会で知る「清宮ロス」。日本でスラッガーを育てるのは至難?

  • 中村計●文 text by Nakamura Kei
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 最速149キロの本格派左腕で、地元出身で、マスクもいい。今大会を代表するスター選手だといっていいだろう。大会2日目の第3試合(対高川学園戦)、5対1で完投勝利を挙げた大阪代表・履正社のエース寺島成輝のことである。

 彼が、どこまで球場の雰囲気を変えられるか。それを楽しみにしていた。平日にもかかわらず、4万3000人の観衆を集め、内容も2被安打、11奪三振と非の打ちどころはなかった。が、球場の空気を変えるまでには至らなかった。

 そんなことを考えたのは、この夏は、早実の清宮幸太郎がいないからである。

初戦の高川学園戦で被安打2、失点1、奪三振11と好投した履正社のエース・寺島成輝初戦の高川学園戦で被安打2、失点1、奪三振11と好投した履正社のエース・寺島成輝  この夏、清宮が西東京大会の準々決勝で負けて、真っ先に残念に思ったのは、「今年は、あの雰囲気を味わえないのだろうな......」ということだった。

 スポーツイベントにおける最高の演出とは、何人、ワクワクしている観衆を集めることができるかだと思う。数万人の心臓の鼓動が聞こえてくるかのような空気感は、いくら資金を投入し、技術の粋を集めても、なかなか実現できるものではない。

 しかし昨夏は、ひとりの1年生が、そんなムードをいとも簡単に作り上げてしまった。

 早実の1回戦は、土曜日だったこともあり、8時プレイボールという第1試合だったにもかかわらず、4万7000人の大入り。異様な熱気だったことを覚えている。

 あんな空気感を味わったのは、2006年夏の決勝、早実対駒大苫小牧の再試合以来だった。その雰囲気が、準決勝で早実が敗れるまで続いたのだ。

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