初出場「きらやか銀行」が都市対抗で起こした創部65年目の奇跡 (6ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 試合後、梅津は悔しそうな表情でダグアウト裏から姿を現した。

「西村、安成のバッテリーはこれ以上ないという攻めをしてくれまし た。1回戦で活躍していた谷(恭兵)も3三振と完璧に抑えましたし。でも、相手投手の六信(慎吾)が素晴らしかった。あとはポジショニングや攻め方から、 ウチの打線の弱点も相当研究されているなと感じました。攻撃面でもっと分析できていれば......」

 そして捕手の安成もまた、この一戦を「勝てた試合」と悔やんだ。

「クリーンアップを警戒して、ある程度抑えることができて勝てる確率は高かった。でも、最後は3番の井貝さんに打たれてしまって......。裏方に回ってくれた梅津さんのためにも、勝ちたかったです......」

 なぜ、このチームが名門相手にこれほど戦えたのだろうか。その理由を安成に聞いてみた。

「スター選手はいなくても、束になってかかることでどんなチームが相手でも戦えるのだと思います。この経験をこれからも生かしていきたいです」

 そして梅津もまた、敗戦を受け入れ、前を向いた。

「去 年までは、試合に出ていない選手のなかには他人事に見える選手もいました。でも、今年はそんなことなく、中堅の小野寺(貴哉)や中島(周作)たちが若い選 手を引っ張ってくれて、まとまりのあるチームになりました。西村ら補強選手の野球に取り組む姿勢を見習うこともできましたし、チームとしてすごく成長して いると思います」

 創部65年目にして、新たな歴史を刻んだきらやか銀行野球部。その躍進の陰には、暗黒時代を経験した「生き残り」の身を粉にした奮闘の日々があった。

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