焼肉屋の店員から球界に復帰。2000年の阪神ドラ1、藤田太陽の今 (4ページ目)

  • 和田哲也●文・写真 text&photo by Wada Tetsuya

――2009年の途中で西武にトレードし、リリーフとして活躍。2013年にヤクルトを引退することになるんですが、「まだやれる」という気持ちはなかったんですか?

「自分の理想とする投球にはほど遠かったですから。『また手術してもいいから来てほしい』というオファーもあったんですけど、お客さんからお金を頂いてパフォーマンスを見せるレベルではないと思って、引退を決意しました。

 自分で決めたものの、辞めて1、2ヵ月くらいはずっと布団の中にこもっていましたね。軽いうつ状態ですよ(笑)。小学校4年生からすべてを捧げてきた野球がいきなりなくなって、仕事もないし、『もう、どうしよう』ってなってました」

――そこから解説者やコーチではなく、焼肉屋で働くことになったのはなぜですか?

「最初はちょっと野球を忘れたかったっていうのは正直なところあったんですよね。好きだからこそ忘れたいみたいな。ただ、自分が全然興味のない方向で働こうと思っても、結局は自分の中で妥協する面が出てきて、嫌なことしか頭に浮かばないだろうなと。

 だから、応援してくれたファンのためにスポーツバーを開こうと思ったんですよ。その準備として、仕入先とか、調理方法とか、接客もきっちりしてる西麻布の焼肉屋さんで全部を学ぼうと思ったんです。頼みこんで働きだしてからの1年間は、夕方5時から朝5時まで仕事して、終わってからもいろんな勉強をしていたのでほぼ寝てなかったですね」

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