【高校野球】センバツ総括――
6校出場もわずか1勝。関西勢の凋落はなぜ起きた?

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

昨年秋の近畿大会を準優勝の報徳学園も初戦(常葉菊川戦)で姿を消した昨年秋の近畿大会を準優勝の報徳学園も初戦(常葉菊川戦)で姿を消した 浦和学院の創部35年目での初優勝で幕を閉じた第85回選抜高校野球大会。埼玉県勢としては1968年の大宮工業以来、じつに45年ぶりの快挙でもあった。その一方で、78年ぶりの出来事も起こっていた。関西勢が1勝以下に終わったのが、1935年のセンバツ以来のことだったというのだ。このセンバツでは、大阪桐蔭が1勝した以外は、履正社、報徳学園、龍谷大平安、大和広陵、京都翔英の5校が初戦敗退。ちなみに、センバツのベスト8に関西勢が残らなかったのは、85回を数えるセンバツの歴史の中でも5度目のこと。前回が2010年だったことからもわかるように、かつての勢いが失われているのは明らかだ。

 こうした話題になった時、その理由として必ず挙げられるのが野球留学の問題だ。中学時代、大阪や兵庫をはじめ、関西で注目を集めた選手が地方の高校に進み、その結果、戦力の空洞化が起きて関西の戦力が低下していくという。確かに、東北高校(宮城)に進んだダルビッシュ有(レンジャーズ)や、駒大苫小牧(北海道)の田中将大(楽天)を筆頭に、関西出身の選手が地方の高校に進み、活躍するケースは多い。昨年の甲子園で大活躍した光星学院(青森)の北条史也(阪神)、田村龍弘(ロッテ)も関西出身の選手たちだった。ただ、今の選手たちが地方へ進む理由は、「甲子園に出やすいから」というだけではない。むしろ「それ以外の部分が大きい」と語るのは、田中が中学時代に所属していた宝塚ボーイズの奥村幸治監督だ。

「ウチのチームから地方の高校に進む選手は毎年多くいますが、最初から地方ありきで進学を考えているのではありません。僕も選手も第一に考えるのは、『いい野球をやっているチーム』や『愛情ある指導者がいるチーム』かどうかということです。私もいろんな高校の練習を見させてもらい、指導者の方と話をさせてもらったりしますけど、地方に魅力のあるチームが増えたなと感じるのは確かです」

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