【ドラフト】プロスカウトが語る、「空白の1年」を過ごした菅野智之の現評価

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 荒川祐史●写真 photo by Arakawa Yuji

浪人の間、練習試合を含む一切の対外試合に出場できなかった菅野智之浪人の間、練習試合を含む一切の対外試合に出場できなかった菅野智之 菅野智之にまもなく2度目のドラフトがやって来る。伯父の原辰徳が監督を務める巨人への入団を希望しながら、昨秋のドラフト会議では巨人の他に日本ハムからサプライズ指名を受け、抽選の結果、日本ハムが交渉権を獲得した。およそ1カ月にわたる入団交渉の末、菅野は日本ハムへの入団を拒否して1年間の「浪人」を選んだ。

 東海大学の卒業延期という措置を受けて、学生として練習を重ねながら、1年を過ごしてきた。練習には参加できるので、チームメイト相手の紅白戦やシートバッティングでは登板したが、それはあくまでも実戦の「疑似体験」でしかなく、口から内臓が飛び出しそうになるような試合前の重圧など、緊張感とは距離を置いた1年だった。

「わがままとか、勝手とか言う人もいるけど、ピッチャーが1年間実戦を休むってことは、そりゃあ大変なことですよ」

 投手出身のあるスカウトはこう切り出し、続けた。

「ピッチャーなんて、偉そうに投げているように見えますけど、結構デリケートなものでね......。いつも投げているのに、スタンドからのヤジどころか、カラスの泣き声でも調子が変わってしまうことがあるんですよ。微妙な感覚の中で投げているわけで、菅野くんにいちばん心配なのは、(マウンドからホームまでの)18.44mが遠くに見えないかっていうことなんですよ。プロで実戦のマウンドに上がった時にね」

 また、内野手出身のスカウトは別の角度から語ってくれた。

「私も大きなケガをして、長いブランクの後で試合に出た時、いちばん苦労したのが、二塁走者のけん制に入るときのピッチャーとのタイミングでした。ピッチャーは経験したことがないのでわかりませんが、例えば菅野くんの場合、セットでの走者との間合いとか、一塁ベース上での連係プレイとか、どうなんですかねぇ」

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