センバツ優勝校の敦賀気比を破った花巻東の「徹底力」

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 夏の高校野球も佳境に差しかかってきた。それにしても、今年の甲子園は観客が多い。「高校野球100年」、「早稲田実業のスーパー1年生・清宮幸太郎」など話題にも事欠かないし、何より球児たちの懸命なプレイが見る者の心を惹きつけるのだろう。

 清宮幸太郎のホームランも、東海大相模の小笠原慎之介の151キロもすごかったが、チームという「組織」として、見事な攻めを見せてくれたチームがあった。

敦賀気比戦で3回に先制の三塁打を放った花巻東の4番・熊谷星南敦賀気比戦で3回に先制の三塁打を放った花巻東の4番・熊谷星南

 大会第8日目の第4試合、花巻東(岩手)と敦賀気比(福井)との一戦。花巻東がセンバツ優勝の敦賀気比を相手にしつこい攻めを見せ、好投手・平沼翔太を攻略してみせた。

 平沼は140キロ台のストレートにスライダー、チェンジアップ、そしてフォークを駆使し、攻略困難な投手だ。

 花巻東の初回、先頭打者の田老麗希は三振に倒れるも、2番の福島圭斗が高めの速球をレフト前に弾き返した。その時、福島の左足は完全にバッターボックスの前縁を踏み越えているように見えた。

「あれっ」と思い、続く3番・千田京平の立ち位置を見たら、やはり前縁ギリギリに立っていた。その千田は外のスライダーを食らいつくようにしてライト前に持っていった。

 そして4番・熊谷星南(くまがい・せな)もまったく同じ位置に立っているのを見て、「これは平沼のインコースのスライダーを潰しにきている」と直感した。「そうはさせない」と、平沼もインコースにスライダーを投げ込んだが、ボールは熊谷の背中に当たった。コースを気にして体が開いた分、スライダーが抜けてしまったのだ。

1 / 2

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る