高校ナンバーワン右腕、県岐阜商・高橋純平を待ち構える試練

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 敦賀気比(福井)の初優勝で幕を閉じた第87回選抜高校野球大会。その選抜でプロスカウトから最も高い評価を得たのが、県岐阜商のエース・高橋純平だ。準々決勝で敗れはしたが、最速152キロのストレートと抜群の制球力はスカウトたちを唸(うな)らせた。そして高橋の才能を垣間見たのが、1回戦の松商学園(長野)との試合だった。

選抜では準々決勝で敗れたが、能力の高さを証明した県岐阜商のエース・高橋純平選抜では準々決勝で敗れたが、能力の高さを証明した県岐阜商のエース・高橋純平

 この試合、高橋は序盤から苦しんでいた。球速はコンスタントに140キロ前半をマークし、150キロを超す球も何球かあったが、なかなか空振りが奪えない。その最大の理由はカーブが決まらなかったことだ。

"すっぽ抜け"という表現がぴったり当てはまるボールが何球も続き、見ているこっちは、爪を割ったか、それともマメをつぶしたかと思っていた。このままカーブが決まらないなら、後半につかまってしまうのではないか。「県岐阜商・高橋 初戦敗退!」という見出しが頭に浮かんだほどだった。

 3回、先制された2回に続き、一死一、二塁のピンチを迎えた。ここで、2球続けて問題のカーブが決まった。すると、その次のストレートから腕の振りが急に変わったのだ。

「よし、これでいける!」

 今日のピッチングに確信を持った瞬間だった。これまでのストレートとは明らかに違うキレと伸び。その迫力は記者席にまで伝わってきた。腕の振りが変わって、ピッチングもガラッと変わった。105~110キロのカーブを挟みながら、ストレートはコンスタントに145キロ前後をマーク。カーブを挟むことで、球速表示以上のスピード感を打者に与えた。

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