名将ペトロヴィッチの金言と実践。Jリーグはこうすれば「もっと面白くなる」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

「皆さんには鳥栖の試合をお勧めする」

 アウェーで川崎に5-2で敗れた試合も、最後は力尽きたものの、散り際の艶やかさがあった。

「マリノスはおそらくチャンピオンになるが、皆さんには(サガン)鳥栖の試合をお勧めする。とてもすばらしい戦いをしている。彼らはフェノメノ(驚異的なもの、非凡なもの)。ぜひ、鳥栖の戦いに注目してほしい」

 ペトロヴィッチ監督はそう言って笑みを洩らした。札幌と同じく、能動的な戦いを見せる鳥栖の姿勢にシンパシーを感じるのだろう。

 今シーズンから川井健太監督が率いる鳥栖は、上位を窺うほどの結果も収めている。予算規模を考えた場合、J2の上位クラブよりも劣るにもかかわらず、攻撃的スタイルを信奉し、選手も成長、進化を遂げつつある。どこを相手にしても堂々と撃ち合い、その苛烈さで「今シーズンのJ1最高殊勲賞」に値する。大げさに言えば、日本サッカーの希望だ。

 森保一監督が率いる日本代表が、なぜ人気低迷に喘いでいるのか。あらためて考えるべきだろう。日本サッカーに、人材がいないわけではない。

 たとえばスポルティング・リスボンのルーベン・アモリム監督は、攻撃的編成を組み、守田英正のフィジカル的な非力さよりも、ボールプレー能力を高く買い、ボランチで先発を与え、チャンピオンズリーグ(CL)で成果を出しつつある。セルティックのアンジェ・ポステコグルー監督も、同じくCLで、古橋亨梧、旗手怜央、前田大然の攻撃的才能を十全に引き出している。

 指揮官の決断によって、日本サッカーはまだまだ強くなるはずなのだ。

 横浜FMとのスコアレスドローで、札幌は11位と残留圏内にいる。しかし少しでも気を抜けば、降格圏に足を踏み入れる。結果を出さなければ、スペクタクルが成立しないのも、円熟の指揮官は承知しているだろう。

「(横浜FM戦は)お互いのスタイルを出す、攻め合う展開でした。決めきれませんでしたが、どちらも多くのチャンスを作りました。残留を考えれば、アウェーでマリノス相手に勝ち点1は満足できます」

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