【自転車】片山右京「日本人が海外挑戦しづらい要因とは」 (2ページ目)

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira
  • TOBI●写真 photo by TOBI

――今中さんが欧州で走っていたころの世界と日本のレベル差は、あれから15年近く経った現在、縮まっているのでしょうか? あるいは、相変わらず実力差は大きなままですか。

今中 別府(史之/トレック・ファクトリー・レーシング所属)君、新城(幸也/チーム・ユーロップカー所属)君、そして土井(雪広/TeamUKYO所属)君......。この3人がグランツールを走ってくれたことで、2009年から日本でも勢いがドーンと上がったんです。新城君はすでに5回ツールに出ているし、フランスだけじゃなく、イタリアでもすごく評価されて愛される存在になっている。そういう事実を見ると、本当に飛び抜けた何人かだけれど、しっかりと進化はしているんですよね。

 ただ、そこにつながるルートがなくて、突然変異的に登場する優れた選手たちが自分の力で頑張らないと、トップの世界に入ることができない。一方で、日本にはもともと実業団というシステムがありましたが、今はJプロツアーという形式でレース数がすごく増えて、全国の地域も受け入れ態勢を作り、いい状態になりつつあるんです。それでも、ジャパンカップツアー・オブ・ジャパンを走ると、欧州から参戦してきた選手たちとの差はなかなか埋まらない。そこを何とかしなきゃいけない......ということを、みんなが考えている状況ですね。

片山 Jプロツアーも、お客さんへの見せ方などを含めて、みんながもうちょっと来やすい環境作りや、スポンサーが集まりやすいインフラもこれからは作っていなきゃいけない。それらがうまく噛み合うようになり、自転車ロードレースが日本でもうちょっとメジャーになってくれば、いろんな意味でもう少し良くなるかもしれないですね。

今中 うん、良くなりますよ。

片山 でも、日本のチームがツール・ド・フランスに参戦して勝つ――なんて、サッカーでいえばワールドカップで優勝宣言するのと同じようなことを言っているわけだから。極端なことをいえば、そんなことはあまりにもおそれ多くて、口にもできない。だけど、まずはスタートしなきゃ。あきらめちゃいけないっていうことだけはハッキリしている。

今中 そうだね。まずは第一歩を踏み出してチャレンジしないと、何も掴めないし、始まりもしない。そういう意味では、新城君や別府君のレベルはたいしたものですよ。本当にスバ抜けて強いし、当たり前のようにグランツールを走っている。土井君もそうですよね。ブエルタ・ア・エスパーニャに当然のように2回参戦して、エースを牽引して勝たせる仕事をしながら、自分自身もきっちりと最後まで完走した。だから、この3人+αのレベルは上がっているんです。でも、一般論として日本という国は、海外にチャレンジしても体験だけで終わってしまう傾向がありますね。

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