【自転車】片山右京「2014年シーズンで学んだこと」 (3ページ目)
(将来のツール・ド・フランス参戦という)大きな旗印を掲げているから、僕たちは今後もっと大きなハードルを越えていかなければいけない。そして、その意味ではこれからが本当に大変だな、と思うけれど、ひとつハッキリしているのは、たとえ世界最高の選手でも、『風を止めることだけはできない』ということ。その風の中をたったひとりで200キロもの距離を逃げ切ることができる選手も、この地球上には存在しない。それくらい自然を相手に戦っている競技だから、自転車ロードレースは複雑だし、残酷だし、奥が深いチームスポーツなんです」
個人タイトルは連覇を達成したものの、チームタイトルをライバルに奪取されることで、2014年の片山右京は、この競技の難しさを改めて思い知らされることになった。しかし、この苦い経験は、さらなる高みを目指さなければならない彼らにとって、ある意味では必要な過程だったのかもしれない。今年のこの教訓は、来シーズンのTeamUKYOの体制作りに、果たしてどのような影響をもたらすのだろう。
「たぶんね、軌道修正をしなければならないのは、自分の頭の中だけなんですよ」
あっけらかんとした調子で、片山は言う。
「世界で僕たちの何歩も先を行っている人たちから見れば、こんなものは当たり前のことで、大人には当然のことを、子どもが知らないのと同じように、ただ僕が知らなかっただけなんだと思う、きっとね。
焦らずにもっとゆっくり進めればいい、と言ってくれる人もいるけれど、のんびり構えているとチャンスなんてあっという間に逃げていく。だから、常にアクセルを踏み続けていないと、ブレーキに足をかけた瞬間に、2位や3位になってしまう」
いかにも片山らしい言葉であり、考え方だ。そう告げると、片山は言下(げんか)にそれを否定した。
「いや、片山右京だから、じゃないよ。勝負というのは、もともとそういうものなんだよ」
そう、だからそれこそが、片山らしい発想なのだ。
著者プロフィール
片山右京 (かたやま・うきょう)
1963年5月29日生まれ、神奈川県相模原市出身。1983年にFJ1600シリーズでレースデビューを果たし、1985年には全日本F3にステップアップ。1991年に全日本F3000シリーズチャンピオンとなる。その実績が認められて1992年、ラルースチームから日本人3人目のF1レギュラードライバーとして参戦。1993年にはティレルに移籍し、1994年の開幕戦ブラジルGPで5位に入賞して初ポイントを獲得。F1では1997年まで活動し、その後、ル・マン24時間耐久レースなどに参戦。一方、登山は幼いころから勤しんでおり、F1引退後はライフワークとして活動。キリマンジャロなど世界の名だたる山を登頂している。自転車はロードレースの選手として参加し始め、現在は自身の運営する「TeamUKYO」でチーム監督を務めている。
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