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【自転車】片山右京「それぞれ異なるレーサーのタイプとは?」 (3ページ目)

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira photo by AFLO

【オールラウンダー】
 すべての能力をまんべんなく兼ね備えた選手。山岳やタイムトライアルなど、特別な資質に注目すると各スペシャリストに一歩譲ることもあるが、平均して高い能力を備えているため、全ステージの総合優勝争いに生き残るのは、このタイプであることが多い。

 今大会の優勝候補のアルベルト・コンタドール(スペイン/ティンコフ・サクソ)や、7月12日現在総合首位につけている2013年ツール総合3位のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア/アスタナ・チーム)などが、オールラウンダータイプの典型的選手だ。
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 一方、TeamUKYOの選手の例で示すならば、昨年春の来日直後に行なわれた伊吹山ヒルクライムで圧倒的な速さを発揮し、今年の伊吹山も連覇して山岳レースでのずば抜けた能力を披露したホセ・ビセンテ(スペイン)。それらの事実から、ホセはクライマーと思われがちだが、むしろ総合的な能力の高いオールラウンダーといったほうが適切だろう。7月6日に伊豆・修善寺の日本サイクルスポーツセンターで行なわれたJプロツアー第10戦・東日本ロードクラシックは、参戦99選手中、完走は13名という苛酷な展開になったが、そのサバイバルレースでホセは終盤まで独走状態を保った。

 このレースでは、ホセと同様に、チームメイトの土井雪広も序盤からトップグループを構成した。土井もまた、あらゆる局面で高い能力を発揮するオールラウンダータイプの選手で、レース後半にはトップに立って何度かアタックを仕掛けた。最後はゴール直前のスプリント勝負になり、土井は惜しくも僅差の2位、ホセは4位でチェッカーを受けた。

 このように、チーム内にどのようなタイプの選手を揃えるかによって、レースに参戦する各チームの戦略や、達成すべき目標は大きく異なってくる。将棋に喩(たと)えるならば、金将や銀将を揃えて固い勝負を進めるのか、飛車や角行の大駒で派手な勝負に出るか、それとも香車や桂馬で小回りの利く戦いを仕掛けるか——といった違い、とでもいえばいいだろうか。

 次回は、長いステージレースでチームが狙う各賞や戦術、駆け引きなどについて話を進めていきたい。

(次回に続く)

著者プロフィール

  • 片山右京

    片山右京 (かたやま・うきょう)

    1963年5月29日生まれ、神奈川県相模原市出身。1983年にFJ1600シリーズでレースデビューを果たし、1985年には全日本F3にステップアップ。1991年に全日本F3000シリーズチャンピオンとなる。その実績が認められて1992年、ラルースチームから日本人3人目のF1レギュラードライバーとして参戦。1993年にはティレルに移籍し、1994年の開幕戦ブラジルGPで5位に入賞して初ポイントを獲得。F1では1997年まで活動し、その後、ル・マン24時間耐久レースなどに参戦。一方、登山は幼いころから勤しんでおり、F1引退後はライフワークとして活動。キリマンジャロなど世界の名だたる山を登頂している。自転車はロードレースの選手として参加し始め、現在は自身の運営する「TeamUKYO」でチーム監督を務めている。

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