【新車のツボ174】トヨタ GRヤリス。世界で唯一の公道を走るWRCカー (3ページ目)
実際、その3気筒ターボの濃厚な存在感はGRヤリス最大のツボである。3500rpm以下ではあまり覇気がないのに、4000rpm前後に達した途端、なにかが炸裂したかのようにモリモリと力が湧きだす。このある意味で古典的な味わいは、本物のチューンドエンジンそのもの。そこから回転限界の7200rpmにいたる"ビィーン"という絞り出すような排気音と鼓動は、このクルマでしか味わえない。
それに組み合わせられる4WDもツボだ。前後駆動配分を安心感の高いノーマルモード(60:40)、とにかく推進力の高いトラックモード(50:50)、そして回頭性重視のスポーツモード(30:70)に切り替えられるもので、それぞれに乗り味が変わるのが面白い。
そんなGRヤリスは、見た目からして乗り心地が悪そうだが、実際は正反対。ワイドな歩幅のもつ専用ボディと動力トルクを四輪に分散させるフルタイム4WDのおかげで、サスペンションをガチガチに固めなくても、コーナリングではしっとりと踏ん張ってくれるし、エンジンパワーをあますところなく路面にたたきつけられるからだ。とくにラリーでも走る荒れた一般道では、豊かでしなやかなサスストロークが生命線。この快適な乗り心地も生きた道と本物のノウハウで鍛えられたツボなのだろう。
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