【新車のツボ174】トヨタ GRヤリス。世界で唯一の公道を走るWRCカー

  • 佐野弘宗●取材・文・写真 text & photo by Sano Hiromune

 GRヤリスは、おなじみのヤリスに1.6リッターターボエンジンをねじ込んだ四輪駆動スポーツコンパクトカーである。272ps/370Nmというエンジン性能はひと昔前ならスーパーカー級であり、普通のヤリスより見るからに拡幅されたワイドボディもあいまって、モンスター的な迫力すら感じさせる。

 そんなGRヤリスは"世界ラリー選手権(WRC)で勝つためのホモロゲーションモデル"として、昨2020年秋に発売された。ホモロゲーションモデルとは、市販車ベースの競技のために開発・市販されるクルマのことだ。

 先日、トヨタは来たる2022年用ニューマシンの開発動画を公開したが、なるほどGRヤリスのカタチをしている。ただ、それは来年から導入される"ラリー1"という新規定のもので、同規定では、これまでのように市販車のハードウェアをベースとする義務はない。

 知っている人も多いように、GRヤリスはもともと"WRカー"規定のラストシーズン=2021年にすべての照準を定めて発売された。しかし、新型コロナウィルスの影響でトヨタは2021年用マシンの新規開発を断念して、今シーズンも従来型マシンを走らせている。つまり、WRCホモロゲーションモデル......というGRヤリス本来の役割は、結果的にも意味のないものになってしまっているのだ。

1 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る