【新車のツボ132】アバルト124スパイダー、ガイシャなのに輸入車ではない (3ページ目)

  • 佐野弘宗●文・撮影 text&photo by Sano Hiromune


 なので、ハイパワーエンジン対応の6MTはロードスターのそれほど変速操作がカキカキ決まらないし、不用意にアクセルを踏むと後輪が比較的簡単に滑るので、公道を走るときにはロードスターよりは気をつかう。

 こういう本当に些細なササクレやアンバランスも、徹底して磨き尽くすのがロードスターの価値観である。ただ、なんとなれば乗る人間もダイエットしないと恐縮するくらい清廉なロードスターに対して、124スパイダーは素直にアッケラカンと楽しい。


 スポーツカーなんてしょせん遊びの道具。少しばかりの粗っぽいところがあっても、それはそれでピリ辛の薬味みたいなもの。だいたいにして、元がロードスターなので、124スパイダーだって絶対的には小さくて軽く、世界屈指にバランス派のスポーツカーであることに変わりない。

 スポーツカーは自由である。武士道精神の権化みたいなロードスターは尊敬に値するが、こむずかしい理屈を必要としない124スパイダーもまた、それに劣らないツボなスポーツカーである。

 ところで、現在販売されている世界のスポーツカーを見わたせばおわかりのように、今の時代に、全身専用設計のスポーツカーをこんな手頃価格でつくる技術と、その開発を許す経営的な度量をもちあわせている自動車メーカーは日本にしかない。

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