【新車のツボ114】トヨタ・ランドクルーザー・プラド試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 トヨタを......いや、日本を代表するオフロード車であるランドクルーザー(通称ランクル)は、ここでも何度か書いたように、大きく3種類ある。ランクルでもっとも大きく高価なのが"200"(第33回参照)で、もっとも簡素で走破能力が高いのが"70"(第96回参照)だ。そして、今回のテーマは3番目......つまり、これまで取り上げる機会がなかった最後のランクルである。

   本連載がスタートして5年以上、回数にして114回目にして、こうして"ランクル完全制覇"を達成したことに、私は勝手に悦に入っている。いつものトヨタは「無難すぎてつまらない」だの「日本市場ではお客を見切りすぎ」だの揶揄されがちだが、これまた何度も書いてきたように、ランクルはマジモノ。トヨタでもっとも良心的な商品のひとつであり、ニッポンの誇りだ。

 プラドは価格やサイズでは200と70の中間に位置するランクルである。200ほど豪奢ではなく、また70ほどオシゴトグルマ的な質素さもないが、世のSUVのなかでは高級な部類に入り、メカニズムは指折りの本格派。そんなプラドの本質を、開発担当氏は「たとえば世界滅亡の日がきたとして、地球上で最後まで生き残るクルマが70と200、その前日まで残っているのがプラド」と表現した。

 この発言だけを見ると「プラドは弱い?」と誤解してしまいそうだが、そもそも"前日"の時点で、ランクル以外のクルマはすべて息絶えている前提である(笑)。いずれにしても、「世界でもっとも悪路に強く、そしてもっともコワれにくい」というのが、プラドを含めたランクルの絶対的なツボである。

 というわけで、ランクルではもっともカジュアルというか民生的(?)なプラドでも、日本では、ほれぼれするほどゴツくて、そびえるように背が高い。そしてもちろん、ワタシごときのウデや感性では、200や70との「地球滅亡1日分」の差をこれっぽっちも感じ取れない。ランクルはランクルである。

 プラドもほかのランクルと同様、独立したハシゴ型フレームにボディとなる箱を載せたオフロード車特有の構造となっている。そのせいで、床はよじ登るように高く、走り出すと、路面から隔絶されて、どこか守られて浮遊したような独特の乗り心地をもつ。

 これらはすべてランクルに共通する味わいで、イマドキの"ダイレクト感"や"軽快感"とは正反対。だが、これを快感になったら最後、ランクル以外の乗用車系SUVは、まるで下着のまま外出するような不安な乗り物に思えてしまうから始末が悪い。走行中の反応は一貫してゆったりなのがランクルならでは......だが、実際の動きは超正確。ボディの四隅もドンピシャにイメージできるから、ジャングルだろうが砂漠だろうが、混雑した都心だろうが、運転しやすいことこのうえない。

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