【新車のツボ115】スバルWRX STI試乗レポート
いま日本で新車購入できる日本車のなかで、もっとも汗臭く、もっとも暑苦しく、同時にもっともアブラ臭く、そしてもっともオタクなクルマはなにか......と問われたら、ワタシは迷うことなく、このクルマだと断言したい。スバルWRXのSTIである。
"WRX"といえば、かつてはインプレッサシリーズのひとつで、世界ラリー選手権用に開発された超体育会系スポーツモデルだった。しかし、現行モデルからは(基本設計が実質インプレッサの強化型なのは変わらないけど)、インプレッサとは別商品の"WRX"として格上げされている。
そんな最新WRXの売れ筋はオートマの"S4"というモデルで、上級のレガシィに匹敵する快適装備に、最新鋭の直噴ターボエンジン、そして自慢の事前察知型安全システム"アイサイト"などをフル装備する。それはハイテクで今っぽい高級スポーツセダンだ。
いっぽうで、モータースポーツを意識したWRX STI(以下、STI)も健在。今回の主役もそのSTIである。現在のスバルは世界選手権レベルのモータースポーツ活動はしていないが、新しいSTIもプライベーターの手で、世界中のラリーやレースで広く使われている。そんなSTIのエンジンや4WDシステムは、同じWRXでもしょせん民生用(?)のS4とはまったくの別物である。
STIのエンジンは308馬力という怪物級のピーク性能をもつが、最近ハヤリの低回転型の直噴ガソリン式ではない。むかしながらの間接噴射式で、素直に大量のガソリンを燃やしながら、8000rpmなんていうバカバカしいほど超高回転まで回る古典的な高性能エンジンだ。しかも、そこまでの吹け上がりは、脳天が突き抜けるほど鋭くスムーズ。
ただ、4000rpm以下では最近の感覚ではビックリするほどセンが細いので、MTを駆使して、エンジンの気持ちいいツボをきちんと使わないと、STIは思ったほど速くない。そして、そのMTのクラッチペダルは、女性では難儀なほど重く、レバーもゴリッと硬質な手応え......と、いちいち汗臭い(笑)。
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プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/