【新車のツボ95】ルノー・ルーテシア・ゼン0.9L試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 ただ、クルマというのはこういう"地元密着型商品"ほど、そのクルマ本来の魅力やメーカーの地力が出る。そして、あえてガイシャに乗って得られるツボ(=カルチャーショック)も、より濃厚になるというものだ。

 ルーテシアの0.9Lエンジンはアクセル全開にすれば、なるほど額面どおり1.3L級のパワーを絞り出す。しかし、小さい排気量をターボで補完しているうえに、直噴や可変ターボなどハイテクもとくにないので、3000rpm以下ではハッキリいってトロい! 高速や深夜の幹線国道で周囲をリードするには、5速MTをコキコキと駆使して、エンジンの美味しい回転域をうまく使わなければならない。

 ルーテシアはそもそもシャシー自慢だから、こうしてエンジンが遅くなると、アシにはさらに余裕が生まれる。しかも、この3気筒は既存の4気筒より、変速機とトータルで60~70kgも軽いのだ。このクラスでエンジン周辺がこれだけ軽いと、その効果は如実。いかにもハナ先がヒラヒラと軽い身のこなしは、交差点をひと曲がりしただけで分かる!

 さらに、「高速ほどヒターッと落ち着く」という、いかにもルノーなフィジカル能力も健在。いやホント、過酷な走りをするほど、活き活きしてくるのがルノー最大のツボだ。

 このルーテシア0.9Lで「上り坂でエラそうに追い越していった大パワー車を、下り坂で一気に追い詰める!」のは、たしかに底意地の悪い行為だが、最高に快感でもある。しかも、エンジン能力を引き出すのにコツが必要なのも、運転好きにはたまらないツボ。このクルマを楽しく走らせているだけで、自然と運転が上手くなること請け合いである。

 かつて高出力エンジンに高い税金が課されていたフランス車には「ショボいエンジンを優秀なアシの速さでおぎなう」という伝統がある。その意味では、このルーテシア0.9Lこそ、フランス伝統のツボグルマといっていい。

【スペック】
ルノー・ルーテシア・ゼン0.9L
全長×全幅×全高:4095×1750×1445mm
ホイールベース:2600mm
車両重量:1130kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ・897cc
最高出力:90ps/5250rpm
最大トルク:135Nm/2500rpm
変速機:5MT
JC08モード燃費:――km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:208万円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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