【新車のツボ81】
VW up!試乗レポート
up!(アップ!)はドイツのフォルクスワーゲン(VW)で最小の量産モデル。欧州市場ではフィアット・パンダ(第63回参照)などとならんで、実質的にもっとも安価な乗用車クラスをになう。つまり"欧州の軽自動車"のような存在といっていい。ただ、欧州には日本の軽自動車(以下、軽)のような厳密なワクはないので、VWが「実用的なクルマをいかに小さく安く、そして魅力的につくるか」を、外的なシバリがないところで率直に追求した結果がこれである。
日本でのup!の価格は100万円台後半。本体価格は"ハイエンド軽"ともいえるダイハツ・タント(第80回参照)とほぼ同じなのだが、クルマのつくりは両車で180度ちがう。見事なまでに正反対で対照的だ。
タントは"軽(とそれ相応の価格)"という外ワクが最初にあって、そのなかで、あらゆる要素や魅力を執念でギュウギュウに詰め込んでいる。それとは対照的に、up!は「乗用車としての最低限の機能を、今の技術でギリギリまで小さく安くすると、こうなっちゃいます」といった風情。つまり、良くも悪くも、すがすがしく割り切っている。
up!のボディサイズは、(高さ以外は)日本の軽よりひとまわり大きい。走りや燃費に悪影響のない自然なボディ全高で、大人4人とその手荷物のための最低限空間、そして最低限の性能エンジンと安全性を確保すると、自然とこの大きさになる......ということだ。up!を見ると、日本の軽のダダッ広さにあらためて感心するが、それと同時に「ワクにおさめるために、いろいろと無理してんだろうなあ」という同情心もわいたりする。
up!は装備も笑っちゃうほど簡素。エアコンはあるがオート式ではなく、前席はパワーウインドウだが、スイッチは左右に1個ずつ。運転席の手元で助手席の窓は操作できない! リアウインドウにいたっては、昔ながらの手動チルト式だぁ!!
メカニズムもシンプルそのもの。1.0リッター3気筒エンジンはそれなりに騒がしいし、最近流行のアイドリングストップも未装備。オートマもMTを自動化しただけの古典的なタイプで、独特のクセを念頭に運転してあげないとギクシャクする。
1 / 2