【新車のツボ77】BMW i3試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文 text by
  • BMWジャパン●写真photo by BMW Japan

 フロント側が軽いi3は操縦性も独特で、カーブではきちんと減速してフロントタイヤに荷重をかけないと反応が鈍い。しかし、逆にいうと、積極的に加減速させると、素晴らしく俊敏だ。ここで活きてくるのが前記のワンペダルドライブ。アクセルだけでギュッと減速して、クルッと曲がって、再び加速でドーン!! ......という走行感覚は、とびきり新しく、そして純粋に面白い。

 i3より先行したリーフは「だれもがすっと馴染めるように」と、パッケージでも走行感覚でも、EV特有のものをあえて排除した。i3はその正反対で、EVでなければできないことを全面的に大げさに表現する。i3に乗ると最初のうちは違和感だらけなのだが、慣れてくると、エンジン車にはない楽しさがビンビンに伝わってくる。リーフとi3で対照的なクルマづくりの流儀が、最終的にどっちが正しいかはともかく、純粋に好き者のツボを刺激してくれるのは、圧倒的にi3である。

 日本でも街中や高速サービスエリア、道の駅などで見かけるようになってきた急速充電器でも、EVの充電には1時間ほどかかり、また1充電あたりの航続距離が150~300kmである。しかもi3は通常モデルでも500万円もするから、これを気軽に買っていいものかどうかは微妙だ。まあ、i3には普通のEV仕様のほかに、発電用エンジンを積んだ"レンジエクステンダー仕様"も用意されており、そっちを選べば、ガソリンを入れ続けると充電なしでも走ることは可能。ただ、ガソリン容量は9リッターしかなく、増える航続距離は2倍に満たない。いずれにしても、自宅駐車場に充電設備がない人がi3を買うのは現実的ではない。i3はあくまでEVだからだ。

 ただ、「どうせ近距離しか乗らないからEVでいい」と本気で割り切れる人、あるいは「セカンドカーとして面白そう」と素直に思える環境の人にとって、i3ほど新しモノ好き、面白いモノ好き、技術好きのマニアのツボを純粋にくすぐってくれるクルマは、現時点ではほかに存在しない。これはそこいらのスーパーカーより、はるかに面白い乗り物だ。

【スペック】
BMW i3
全長×全幅×全高:4010×1775×1550mm
ホイールベース:2570mm
車両重量:1260kg(1390kg)
動力システム:交流電動モーター
最高出力:170ps/5200rpm
最大トルク:250Nm/100-4800rpm
変速機:――
1充電走行距離:229km
乗車定員:4名
車両本体価格:499.0万円

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