【新車のツボ57】ルノー・メガーヌ・エステートGT220 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 まあ、今回のGT220も表向きは似たようなコンセプトなんだが、その内容をマニアックに見ると、そういうハイテクなしで220psを完全に支配しちゃっているところがなによりスゴイ。専門用語でいうトラクション(=推進力)を小手先ハイテクに頼っていないから、サーキットのようなところを走らせても、失速感もなく、マジで速くて、その気になると手足のように操れる。ワゴンのクセに......。

 多種多様なオートマが登場した現在では、ポルシェやフェラーリのようなスーパーカーまで2ペダルが常識だが、GT220は変速機も古典的な3ペダルのマニュアルである。ただ、シフトレバーの操作ストロークから手応えの重さ、さらにはクラッチのミートポイントまで、見事なまでに絶妙に調律されているから、走りにリズムが生まれる。古典的なターボエンジンも、今どき珍しく回すほどパワーが出る(=回さないと歯がゆい)タイプだが、だからこそシフトとパワーがピタリと決まったときはとてつもなく気持ちよい。

 メガーヌをベースに仕立てたクルマには、さらにゴリゴリのスポーツ志向のメガーヌ・ルノースポールというクルマもあるのだが、攻め込むと適度に穏やかで、高速道路でヒタッと吸いつくGT220のほうが一般道での快感領域はずっと広い。何度も言うが、どちらもハイテクは特になくて、エンジンパワーの出し方とかサスペンションの硬さ......といったアナログ技術の微妙なサジ加減で、それぞれを作り分けているのが素晴らしい。

 誤解してほしくないが、私はルノーから宣伝費その他はいっさい受け取っていない。それどころか、私の現在の個人所有車はルノー、その前もルノーだった。つまり、私はお金をもらうどころか、頼まれてもいないのに、身銭を切ってルノーの普及活動を勝手にしているわけである(?)。だから、どうか私の書くことを信じていただきたい。

 もちろん電子制御を駆使してこれまでにありえない走りを実現したハイテク車もいいのだが、GT220はその正反対ながら、本当にホレボレするほどの職人芸。一部のマニアがルノーに悶絶するツボはそこにある。日本でのルノーは規模こそ小さいが、私を含むルノーにツボを突かれてどうしようもないマニアに支えられて安定した商売をしている。

【スペック】
ルノー・メガーヌ・エステートGT220
全長×全幅×全高:4565×1810×1490mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1420kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ・1998cc
最高出力:220ps/5500rpm
最大トルク:340Nm/2400rpm
変速機:6MT
JC08モード燃費:13.0km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:319.0万円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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