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【新車のツボ57】
ルノー・メガーヌ・エステートGT220 試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 私の個人的オススメを勝手に羅列していく......が主旨のこの連載で、輸入ブランド最多出場はルノーである。ちなみに昨年度の日本における輸入車ブランド別販売台数(日本ブランドは除く)で、ルノーは15位(笑)。つまり、ルノーは日本ではハッキリと不人気というか、カルトな存在である。

 というわけで、今回のルノーは日本で手に入る最新モデルなのだが、現行メガーヌそのものはフランス本国で5年前にデビュー。当連載の第17回にもあるように、約2年前から日本でも販売されており、とくに目新しいものではない。ただ、今回のエステートGT220は、そのメガーヌのワゴンモデルをベースに"ルノースポール・テクノロジーズ"というスポーツモデル開発&モータースポーツ活動を担う子会社が仕立てたものだ。

 GT220は最新モデルではあるが、技術は古典的。220psのハイパワーなのに純粋な前輪駆動(FF)で、サスペンションも素直にキリリと締め上げたタイプ。最近の高性能車は速さと快適性、そして素人も持てあまさないイージーさを狙って、あらゆる電子制御可変ハイテクを仕込むのが普通だが、GT220にはそういうハイテクの類はなにもない。

 だからといって、GT220が普通の人は乗る気にもならない石のような乗り心地で、アラっぽく扱うとどっかに飛んでいきそうな危険なジャジャ馬か......といえば、まったくそんなことはない。低速でちょっとコツコツ感があるが、乗り心地は速度が上がるほどしっとりと落ち着いてくるし、スキを見つけてスロットルをガンガン踏んでも、前輪が無粋に路面を掻きむしったりもしない。

 エンジンパワーを受け止める駆動とステアリングの両方をフロントタイヤ2本だけで担うFF車は、基本的にハイパワーへの対応には限界があるとされる。ひと昔前の高性能FFといえば「暴れるクルマをウデと度胸で押さえつける歓び」みたいなものを演出した商品が大半だったが、最近では空転しかけたタイヤ(だけ)に自動的にブレーキをかける"ブレーキLSD"という技術が開発されたこともあって「速くて快適で扱いやすいFF車」が増えつつある。先月の第55回で紹介したメルセデスBクラスもそんな1台である。

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著者プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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