【新車のツボ56】マツダ・ロードスター・ソフトトップ 試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 マツダのロードスターはそもそも、1960年代から70年代初頭に一世を風靡した、主にイギリス製の軽量スポーツカーに範をとって生まれた。ロードスターは1980年代末の初代モデル発売当初から、「古くて新しい」ところが世界中のマニアに大歓迎されて、世界のド定番車として定着。今に至っている。

 ロードスターの手本となった1960年代当時のイギリス製スポーツカーも、エンジンやサスペンションなどの機械部分はまったくフツーで旧式だった。ただ、ボディがとにかく小さくて軽いから、機械は旧式でもなんとも小気味よく走り、それなりに速く、しかもオープンカーであることで実際以上に体感スピードが高い......という、いわば「心情的スポーツカー」だったのだ。そして、初代ロードスターもまさにそんなスポーツカーだった。

 もっとも、現在のマツダには後輪駆動車そのものがロードスター以外に存在せず、だから結果的に、ロードスターはほぼ全身が専用設計の本格派スポーツカーになってしまっている。それでも身の丈以上に性能を高めることはなく、価格は200万円台をキープ、エンジンもごく普通の2.0リッターでしかない。

 2.0リッターの後輪駆動スポーツカーといえば日本にはトヨタ86/スバルBRZもあるが、まったく新しいコンセプトと新技術でつくられた86/BRZに対して、マツダのエンジンは図太くガオーッとうるさく、乗り心地もけっこう粗っぽい。つまり、ロードスターはなんとも古臭い。しかし、スポーツカーの場合は「古臭い=楽しくない」とはならない。

 ロードスターの乗り味はとにかく軽い。いや、絶対的な車重はビックリするほど軽くはない。ボディサイズや機械内容を考えると、86/BRZのほうが軽いくらいなのだが、ロードスターは重量物をとにかくドライバー周辺に徹底的に凝縮して置くレイアウトだから、体感的に軽い。すなわち超絶に軽快なのだ。

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