上村アナの先輩は五輪メダル候補。高跳び博士・戸邉直人のオタクな日常 (4ページ目)

  • photo by Yamamoto Raita

「今の自分があるのは、研究をして、そこで読み取ったものを競技にも生かしているから。そこが強みでもあるので、今後もそれを続けていきたい。博士号取得後も研究は続けていて、今後もずっと続けたい」

 そう力強く語る戸邉先輩は、海外の選手からは「ドクター戸邉」と呼ばれることもあるそうです。1日のスケジュールは、午前中にトレーニングをして、ランチ後から夜までほとんどデータの分析。「練習の息抜きが研究で、研究の息抜きが練習になっている」と話すほど没頭し、周囲から「そんなにずっと走り高跳びと向き合っていて嫌にならないの?」と言われるそうですが、「いろいろなスポーツで高く跳ぶ動作が必要な種目があるので、他の競技でも自分の研究成果が生かせる可能性がある。やっぱり研究は楽しいし、続けたい」と笑顔でした。

 ちなみに、博士号を取得した論文は『走高跳の踏切局面における下肢3関節のキネティクス特性』。そのタイトルを聞いた瞬間、「キネティクス......?」と、私の頭の上にはクエスチョンマークが並んだのでした。さらに、施設のホワイトボードに数式が書き込まれていたので、見せてもらったのですが、正直、まったく理解できず......。

 日本記録の2m35を出せた要因について聞いたところ、ポイントは「シングルアーム」と「6歩助走」でした。昨シーズンのゴールデングランプリでは助走が9歩で、ダブルアーム、つまり両手を上げて跳んでいましたが、昨シーズン終盤からさらに上を目指すために、助走を6歩に、そしてシングルアームにフォームを変えました。

「両手のほうが、上方向への推進力は増す」とのことですが、戸邉先輩の場合、踏切手前のところで重心が上に上がっていたため、ロスが生じてしまっていた。それを改善する目的でシングルアームにしたところ、動きがスムーズになって記録が伸びたといいます。

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