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日本人がやりがちなスポーツメンタルの5大NG。「緊張しない!」はかえって不安になる (4ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

NG-5
最高のプレーをイメージする

 よくイメージトレーニングで「最高のプレー、理想的な展開をイメージする」というものがありますが、これは必要ありません。なぜならスポーツで理想的な展開などはほぼなく、ほとんどがアクシデントの連続だからです。最高のプレーも1年に何回できるかでしょう。

 パフォーマンスのほとんどが、持っている力の7〜8割という出来のなかで、最高のプレーばかりをイメージしていると、逆にそれができなかった時のメンタル的なダメージは大きくなってしまいます。

 東京五輪の男子柔道で金メダルを取った大野将平選手の言葉で、最近よく取り上げられるのが "防衛的悲観主義"という言葉です。簡単に説明すると「最悪の未来を想定して、そうならないためにはどうしたらいいのか対策を考えて、結果を出す思考パターン」になります。

 大野選手にとって最悪の未来は負けることです。そこで「どうしたら自分を負かすことができるのか?」と自問自答するわけです。自分が負けるかもしれないパターンを幾通りも考えて、それに対してどうすればいいかという対策を考えていたと言います。

 よく"プラス思考"という言葉を聞きますが、じつは日本人は体質的に苦手としています。防衛的悲観主義はアジア人に多い考え方なのですが、ネガティブな人がプラス思考をやるとかえって不安になってしまいます。

 逆にネガティブな人は、悪い状況を考えるのが得意なんです。そこに対してどうするかを考えるほうが安心できるし、向いています。日本のトップアスリートはほとんどが防衛的悲観主義だと思います。

 自分の弱点を洗い出して、失敗したり、負けたりするパターンをイメージし、それに対してどうすればいいのかを考える防衛的悲観主義は、結果を出すために非常に有効な考え方です。

笠原 彰
かさはら・あきら/作新学院大学経営学部教授。日本体育大学大学院体育学研究科修士課程修了。メンタルトレーニングラボ主宰。さくらクリニック顧問。プロゴルフ、プロテニスなどのトップアスリートや、中学、高校生チームの指導、講演会活動などを行なっている。現在、現場指導30000時間以上で、豊富な実績のあるスポーツメンタルコンサルタントとして知られる。著書に『最新スポーツメンタルトレーニング』(学研)『ゴルフのメンタルテクニック』(ゴマブックス)『気持ちの片づけ術』」(サンクチュアリ出版)などがある。

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