錦織圭、全仏オープンで完全復活なるか。
「まずは1勝」で道を拓く

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images


昨年の全米OP以来のグランドスラムに挑む錦織圭昨年の全米OP以来のグランドスラムに挑む錦織圭
 落ち葉舞うパリの町景色を照らす秋光は、ローラン・ギャロスのセンターコートにも、いつもと異なるシーンを映すだろうか?

 例年は5月末から6月上旬にかけて開かれる全仏オープンが、今年は新型コロナウイルスの影響により、4カ月遅れて9月27日に開幕する。

 気温はいつもより5度ほど下がり、天気もやや崩れやすい。赤土を乾かすように差す陽光も、今年は威力を弱めることになる。天候に応じて刻一刻とその特性を変え、"生き物"と評されるレッドクレーは、これまで見たことのない表情を見せるだろう。

 その天候以上に、選手のパフォーマンスに影響を及ぼすであろう要素が、全米オープンとの開催時期の近さだ。その期間、わずか13日。ハードコートの全米オープンで終盤まで勝ち上がった選手ほど、スケジュールはタイトになり、クレーへの移行期間も短くなる。

 足もとの滑り方からボールの跳ね方まで、ハードコートとは大きく特性の異なるクレーコートに、短期間でいかに対応できるか? その適応力が、例年以上に重要なファクターとなるはずだ。

 それらの状況を勘案した時、やはり圧倒的な優勝候補として浮上するのが、"赤土の王"ラファエル・ナダル(スペイン)である。優勝回数は12度。全仏オープンでのキャリア通算戦績は、なんと93勝2敗という驚異の数字を誇る。

 しかもナダルは今季、全米オープンを含む北米ハードコートシリーズをスキップし、欧州のクレーコートシーズンに照準を合わせてきた。半年に及ぶ実戦経験の欠如は唯一の不安材料ではあるが、これまでの実績と実力で埋めあわせて余りあるだろう。

 絶対王者ナダルの対抗馬として名前が挙がるのは、順当に考えればノバク・ジョコビッチ(セルビア)や、全米オープン覇者のドミニク・ティエム(オーストリア)だろう。

 ただ、ティエムは全米オープンで決勝まで戦っているため、赤土への適応という面ではハンデがある。またジョコビッチは、大会公式球を自宅に取り寄せてまで狙っていた全米オープンで失格に処され、「空洞だ」と記すほどに落胆した精神面が気になるところ。

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